268.処置
私が切りつけられたのと同時に攻撃は止み、私の側へレオが近づいてくる。
男の魔力が尽きたのだろう。
「ロイ様!」
「大丈夫だ、自分で出来る、刈り取ってこい」
「了解――」
私が自身で手当て出来ること、そして男の意識をを失わせてくるように伝えた。
――この時ロシュはレオが来たことにより、男からの追撃を任せられると、止血最優先に考え動いていたため、口に出していた言葉と脳内で言った言葉が違っていた。
――だがレオは『刈り取ってこい』の一言で『意識を失わせて来る』としっかりと理解し、行動した。
――これがもし新米や見習いだったならば、『刈る』と聞いて『命を取ってこい』と命令を受けたと、判断していたかもしれない。
私としたことが判断を間違えた。
まさか私を狙った攻撃ではなく、私が存在する方面への攻撃だったとは。
王都で怪我をしたが、ここまでではなかった。
「っ」
――ロシュは傷口を止血するため強く圧迫した。
いたいな……はぁ……。
あの風、剣のように切り付けるだけの現象、いや魔法かと想像していたが、まさか抉られるとは思わなかった。
お陰でそう簡単に血は止まりそうにない。
――バンッ!
「っ!」
止血しつつレオの男への対処を見ていた私の耳に、ドアを強く開けた音がした。
視線を向けると、剣をこちらに向け背中には鞄を背負っているアリエスの姿があった。
私は警戒はしたままだったのと、傷口を押さえつけていたのが重なり、力強く押さえつけてしまった……
だが戦闘中だったならいい隙になりそうな音だったなと、感心もしてしまった。
アリエスは私に駆け寄る道中で剣を鞘に納めると、視線を合わせるように屈んだ。
「ロイ様!」
「アリエス。処置を頼む」
「もちろんです!」
鞄を床に下ろし様々な道具を出していくアリエス。
「見させていただきます。横になっていただけますか?」
「あぁ」
アリエスは私を床に寝そべらせるとシャツをめくり、1番酷い脇腹の診断を開始した。
顔色が私より悪くなっていくが、決して手を止めようとはしなかなった。
「ロイ様。こっちは終わった。一応外に連れていきたいけど…」
「アリエスの診断と、応急処置が終わるまでは、監視していてくれ。ありえないとは思うが、仲間がいる可能性も、ある」
「了解しました」
レオに再度命令を出すと、アリエスから声がかかった。
「ロイ様。少し圧をかけ止血の布を当てます」
「わかった」
少しではないほどいたく感じたが、無事脇腹の応急処置は出来た。本格的なのは風呂場でだな。
それからアリエスの診断と応急処置が行われると、レオは男を引きずり部屋から出ていく。
私もアリエスの支えを受けつつ立ち上がると、レオに続くように自室を後にした。
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明日は日曜日なのでお休みです。
また月曜朝9時にお会いしましょう。