264.はりつめていた
おはようございます
アリエスを誤魔化した私は、彼女の返答を待っていた。
これ以上は口論になりそうだから、ゼイラルが『友人』となったことを受け入れてくれるとありがたい。
「……では。ご友人のゼイラル・ムーロンとの接触は、人目を避けて行いましょう」
「いいのか?」
……ありがたくはあるが、今までの事を踏まえ受け入れてくれるとしても、何か条件でもつけられると思ってもいたのだ。
人目を避けての接触だけでいいと分かり、それでいいのか?という問いかけをしてしまっても仕方がないだろう。
「いいのか?とは?」
「アリエスならば、あのまま人目があるからやめろというのかと思っていたんだが」
「ご友人となられたのなら、別の手だてで警戒するのみです」
ゼイラルといういち個人を警戒していたのではなく、知人としての彼を警戒をしていたのか…。
「はぁ。アリエスがゼイラル警戒する必要があるのかは、なんとなく理解しているつもりだ」
「ありがとうございます」
「だがな。そろそろ私と彼の心理戦とさせてくれないか?」
「心理戦ですか?」
「あぁ。この手紙や接触に関してだ。これはゼイラルが私の心を射止められるのか、私が彼に異性としての魅力を感じるのかの心理戦だ。
アリエスが過剰に警戒すると彼への『申し訳なさ』が生まれ、贔屓してしまうかもしれない。
ゼイラルとの最後の接触時に言った『話し方を気軽に』という助け以外、今は何もするつもりはないんだ」
好意を向けられていて何だが、私はまだゼイラルに対して『好意』は抱いていない。
しかし、私と彼の好意の上げ下げに関して過度なちょっかいは『ゼイラル・ムーロン』を知って得た好意ではなく、気を使っての感情からの好意となってしまうのは、私としては不本意なこと。
アリエスにはそれを分かって欲しいと伝えた。
「…分かりました。しかし私の心配も汲んでくださりますか?」
ふむ。アリエスの心配か。最初からそう言っていたしな……
「あぁ。何か1つくらいは、ゼイラルとの接触においての警戒点を受け入れよう。先程の人目を避けてというのは含まないぞ」
「では、一切の『接触』を為さらないようにお願いします」
アリエスが言った『接触』は…
「それは『触れる』という接触のことだな?」
「はい」
「心得た。これからはあまり口出しするなよ?」
「はい。ですがこれからもお手紙は読ませていただきます」
「あぁ」
こうしてアリエスとの交渉は無事済んだ。
……『交渉』だったと思い至ったのは、話し合いが終わった後に『感じた張りつめた空気がなくなった』と、レオに言われたからだ。
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明日7月14日は、日曜休みからの4の付く日休みです。
また、水曜朝9時にお会いしましょう!!!