261.あの時、背後で…
あれからさらに数週が経ち、今の仕事の難しさを噛み締めるような内容から、馴れてきて生活に余裕が出来始めたと、ゼイラルからの手紙に書かれ出した頃。
執務室にて仕事合間に開いた、ゼイラルからの手紙に書かれていたのは、お茶へのお誘いだった。
日程はこちらに合わせると書かれている。
「ロイ様?なんて書かれてたの?」
私が手紙を見た様子が気になったのか、飲み物を取りに行ったアリエスの変わりに側に控えていたレオが、問うてきた。
「ゼイラルからのお茶への誘いだ」
「もう?」
『もう?』だと?
「手紙の量を考えるとむしろ遅い方ではないか?」
「量?」
「レオは知らないのか…いやそうか。毎回は見てなかったな」
「うん」
レオは気になっていたようだが、1通目と2通目を見て以降は、誰かがゼイラルからの手紙を見ていた時、一緒に見させてもらっていただけだと言っていた。
そのため、全ての手紙を読んでいるわけではないからか、『もう』という表現をしたのだと私は悟った。
「手紙の数はもうすぐ70通になる」
「え?そんなに?」
唖然と驚くレオ。
「この量なら遅い方だろう?」
「…うん。一般的だと10通目くらいで誘って断られるか約束を取り付けるはず。ゼイラルは奥手?」
「慎重過ぎるとも取れるぞ」
私も1ヶ月も立てば誘われると思っていたのだがな……。
別に誘われるのを待っていたのではなく、『普通なら』を知っていたため、遅いと感じていたのだ。
「最初にアリエスが睨みすぎたのかも」
「睨む?」
「ゼイラルが最後にここに来たとき。睨んでたから」
……あの時か。
(246話~248話推奨)
「私はただ黙って聞いてくれていたとばかり思っていたが…そうか。睨んでいたのか」
「でも俺とアリエスには身長差あるから、睨んでるように見えただけかも」
「さすがのアリエスも睨めば眉間に皺が寄るだろう。寄っていたか?」
私は当時のアリエスの様子をレオに思い出すように促した。
「……怖い。寄ってた」
レオは身震いを軽くするとそう言った。
「普段の表情が、無表情と微笑みだけだからな…。怒ると一段と怖く感じるだろう」
顔が整っていれば尚更だ。
「ロイ様は感じてないように見えるけど?」
「たまには感じているぞ?背筋が凍るほどにはな」
「それって結構、体感してるね」
「…あぁ」
怖さを感じると言ったが、淡々と身繕い言わなければ、レオのように身震いを起こし、思いだしそうだったからな……。
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