260.文通2
慣れないであろうウェイターとして働きだしてからも、ゼイラルは手紙を欠かさず送ってくれていた。
だが。
「これは…」
その内容を見たアリエスは、驚きと落胆したような声をぼそりと溢した。
ゼイラルの出してきた手紙が、前の数通とは違い若干報告書のようになっていたからだ。
今までは、『――ですので少しでも頑張れればと思っています』と丁寧な感じだったのだが、今来た手紙には、『――慣れないながら指導を受け成長中。今後はウェイターとは別の管轄も指導を受けそうである』と、まるで他人事のように書かれていた。
「思いの外、大変なのだろう」
ウェイターは数十もある席を覚え、食事を運び続ける体力と、注文の品を覚える。
ゼイラルは初めてだらけで慣れない。つまり、手紙に回せるだけの気遣いすら大変なのだろう。
「それはそうかと思いますが。これは文通相手に出す書き方ではありません。大変なのでしたら、『手紙を出さない』という選択肢を取るべきです。お粗末になった手紙など…」
「確かにな。私もこういった手紙が続くくらいなら貰うのは遠慮したい。……次の手紙で書き方については触れず、返事を待とう」
「返答次第ではきっぱりと手紙でのやり取りをやめましょう」
「あぁ…」
だが翌日。
手紙が往復する前に、ゼイラルからもう1通手紙が届き、そこには長々とした謝罪文が書かれていた。
その手紙は、謝罪をするだけに書いたもののため、返答は要らなく、なおかつ今後はきちんとした文章を心がけるといった内容が、書かれていた。
文字がいつもより荒れているのをご了承してください、と書かれていたのだが…
「私より文字は荒れないな」
「そうですね……これで文字が荒れているというのは、ロイ様にとって過度な謙遜になりますね」
「あぁ。本来の文通の方に荒れても字が綺麗だと付けたそう」
荒ぶる文字というのは『字』の原型が崩れるほどのことをいうことだ。
アリエスは私の荒ぶった字を知っているからこそ、『謙遜』だと言ったのだろう。
返答は要らないとは書かれたいたが、『荒ぶっていても字は綺麗だった』ということだけ書かせてもらった。
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謙遜は、控え目な慎ましい態度で振る舞うこと。の意味を適応しています。
ロシュは文字が荒ぶると、字と文章が斜めになり、ミミズ文字+殴り書き+文字の間隔がほぼないため、読めたら奇跡といえる物が出来上がってしまうようです。