257.ただ私は知ってしまった者だ。
しかし、スロウの失敗談を話しているその場におり、なおかつあの手紙の内容を知っているのなら、当然の反応だといえる。
彼の失敗談とされているこの話を知っているのは、当時領主だった父と、妻の母。バルナにサジリウス、そして当事者のクエリアと弟のメダ。
……そして。読書をしていた私だけが知っている。
ただ私がいたことは、最後の方まで皆気づかなかった。
気づかれたきっかけは、クエリアがスロウからもらった手紙がないことに気付き、テーブルの下を覗いたため、気づかれた。
そう。私はダイニングのテーブル下で本を読んでいたのだ。
クエリアが私を見つけた時の表情と、悲鳴は今でもよく覚えている。何事かと覗き込んだ者全員が、驚きの表情をしていたな……。
何故そんなところで読んでいたのかというと、テラスからの光と天井…つまりテーブル下の影が、木漏れ日の中ゆったりと出来ていたからだ。
子供だったからな。
テーブルの下でも十分広く感じたし、自分の秘密の部屋が出来たような感覚だった。
それに朝食、昼食、晩御飯以外はダイニングには誰も来ないのもあそこにいた理由だ。
今はもうそんなことしないし、何故していたんだと思うが、当時はそれが一定期間好む場所になっていた。
そしてスロウの話を聞くための広さが、大事な話をする時に多く使われていた執務室では狭かったため、ご飯を食べる以外でダイニングに来たのだろうと、今考えると思う。
…しかしあの時の言い訳は、後から入ってきて話し出した両親や他の者が悪いと、『大事なはなしならおうせつしつでもよかったのになんでここにしたの。私は悪くないから』的な事を言っていた気がする。
最終的に、入念に確認しなかった自分達が悪いと言ってくれたが、テーブルの下に誰がいるなんて普通は思わんなと、あの時の言い訳を反省している。
まぁ、テーブル下で本を読んでいたことに関しては、母とバルナに叱られた。
だが父は、
『もう少し明るくすれば良かったな』
と何故か私に助言し、母とバルナ、そしてサジリウスも加わり父も叱られた。
あれももういい思い出だ。
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