253.犬猿寄り
おはようございます!
――コンコン。
「失礼しまーす」
ノック音の後。間の抜けたような声を発して入室してくるオリオン。返事を待たなかったのは、私が呼んだからだろう。
私はそんなオリオンに一言、声をかける。
「座れ」
「え。あぁ、うん」
アリエスを引き連れドアの前で立っていたオリオンに、椅子に座るように促した。
何の脈絡もなく座るように促されたオリオンは、一瞬戸惑うような表情を見せたが、すぐにかけられた言葉に従い、先程シリウスが座っていた椅子に腰かけた。
「それで?」
「それでって?」
何の脈絡なく『それで?』と言われ、なんの事か分かる物は稀だ。
話を早く聞いて、私とゼイラルが『婚約関係』だと言いふらしたのは自分だったという言質をとりたかったのだ。
急ぎすぎて話が違う方向に行ってもあれだな。
「すまない。急かしすぎて本文を忘れていた」
「仕事の話じゃないよな?それだったら口調直させるだろーし…」
「貴方は仕事でなくとも口調を正すべきだと思います」
話の流れを考えようとしたオリオンが言葉に出した『口調』に反応し、アリエスは直せと言った。
2人は犬猿とまではいかないが、全く仲良くならない。適度な距離で仕事上だけ関わっているという感じだ。
まぁ、アリエスはオリオンに口説かれた者の1人だからな。
この屋敷でオリオンより後に仕えるようになった女性で、彼に口説かれていない者は、いないはずだ。
「相変わらず辛辣だなー。俺にだけ。もしかして好きの裏返――」
「――ありえません。訂正をして、すぐにロイ様のお話を敬語を用いて聞いてください」
アリエスからの言葉を躱そうと、発したオリオンの言葉は途中で切られた。
躱すにも『好き嫌い』を交えた話は降ってはダメだろうに…。
まぁ、これ以上2人の会話か長引くと、アリエスの仕込み武器がオリオンに飛んでいきそうなので、彼女をやんわりと諌めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
もしよろしければ感想・ブックマーク・評価などお願いします!