252.ねじ曲がった
シリウスに目的の物も渡せて、話は終わったと思ったのだが、
「はい…。あ、あの!ロイ様」
嬉しげに刀を布にくるみ直したシリウスが、私に話しかけてきた。彼女の表情には不安が現れていた。
「なんだ?」
「その、婚約者ができたというのは本当でしょうか?」
「は?」
婚約者?
「メダから聞きました…あのゼイラルから婚姻を申し込まれ、ロイ様が受けたと…」
「はぁ…シリウス。今から私がいうことが真実だ。いいな?」
「はい!」
私はゼイラルとのやり取りを簡潔に伝えた。
しかし、どうしたら『決意表明』が『婚姻を申し込まれ、受けた』という話になるんだ…。
いや待て。話が1日もかからずに伝わったということはアリエスやレオから直接話を聞いた者とそうでない者がいるということだ。
…だとすると誰かがねじ曲げて伝えたということもあり得る。
「シリウス。メダが誰から聞いたのか知っているか?」
「いえ…それがどうか…はっ!誰から聞いたのか今から聞いてきましょうか!?」
シリウスは途中で私の知りたいことに気がついたようで、今すぐメダに聞いてくるのだと、やる気がみなぎっている。
「大丈夫だ。もう目星はついている」
「そうですか…ではロイ様。私は失礼させていただきます!刀の件ありがとうございました!」
「あぁ」
今度こそ話を終えて、シリウスは礼をいい部屋を去っていった。それと入れ替わるようにして入ってきたアリエスの手元には、飲み物があった。
私はそれを出されるのを待ってから、あいつ――オリオンをここに連れてくるようにいった。
今日の日程表でオリオンは夜間警備だったはずだ。交代要員をレオに任せろと付けたため、すぐに来るだろう。
さて。話をねじ曲げて伝えたのはどういうことなのだろうな?
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シリウスが不安そうだったのは、
『ロイ様ならば。婚約者が出来たのならば使用人達には自ら言うと思っていた。しかし、人づてに伝えられたと言うことは内密の話を聞いてしまったのでは…』
と思っていたからです。
シリウスにその話を伝えたメダは、そう思い込んだ彼女に叱られましたが、刀を持ち帰った際。
きちんと謝罪されました。
明日は日曜日なのでお休みです!
また【月曜朝9時に】お会いしましょう!