251.異国の剣
夜。
「ロイ様!失礼してもよろしいでしょうか!」
「あぁ、入れ」
「はい!」
食後をダイニングで過ごした後。部屋に帰った私を訪ねてきたのはシリウスだった。
「とりあえず座れ」
「それでは失礼して…」
私はシリウスが座るのを確認してから、布にくるまれた物を彼女に差し出した。
「さて。それではこれを見てもらおうか」
「これは…」
「開いてみてくれ」
「は、はい…」
「どうだ?」
布にくるまれたのは1本の剣……いや『刀』と呼ばれる刃物だった。
これはシリウスが『見習い』とは付いていたものの、騎士として認められた際に、記念として何か欲しいものをと聞いた。
そこで彼女に『刀』が欲しいと言われたため、鍛冶師と共に作り出したのがこの一品だ。
ただ。
シリウスが欲しかったのは斬れる刀ではなく、刀の形を模した物だけのものだった。
そのため今見せている物も、強度はなく切れ味も真剣ほどない。さすがに本物を作れるほどの技術がこの国にないことを変わっていたのだろう。
「まさに…『刀』です…」
「23度目でようやく形になったな」
「反りはさすがに甘いですが、ちゃんと刀に見えます!」
「……ではもう1度だな。反りとやらが甘いのならばまだまだ――」
「いえ!甘いと言ってしまったのは、実家にあった刀と比べてしまったからで、これも十分に刀です!」
確かにシリウスの実家に伺って見た、かの刀はもっとグラデーションがくっきりしていたし、剣ではあり得ないほど湾曲していたな。
あれと比べられたら甘くも見えるか。
「そうか?」
「はい!」
「なら次はそれにあった『さや』の方だか、艶のある塗料となると流通も少ない。そのため木刀のような外見になってしまうが…」
「それで大丈夫です!刀を作っていただいただけでもう十分に満足しています!」
木でできた鞘とその上に塗られた光沢のある黒い塗料らの再現もこの国では無理だ。シリウスが刀だけで満足してくれて少し気が楽になった。
20年以上鍛冶師をやっている者が、鞘だけは諦めたいと愚痴を溢したほどだったからな。
「そうか…。ならあとは鞘と名を刻むだけだと伝えておく」
「はい!ありがとうございます!」
「話は以上だ」
後日、シリウスが満足してくれる刀を作れたようだと報告した時の鍛冶師もまた、満足気だった。
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この小説内では剣と刀は別種の刃物として扱っております。




