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248.気軽にとは自分のタイミングで


おはようございます


ゼイラルはスッキリとした表情になると、手に持っていた鞄から何枚かの紙をこちらに渡してきた。



「これは…住民登録の書類か」

「はい。街の方にはすでに提出してあります」

「役所には頼れば我が家に送ってくれたぞ?」

「ここに来る予定がありましたし、決意表明のためだけにお時間を取らせるわけには、と。ご領主様への挨拶もありましたし」



今まで『ロシュさん』と呼んでいたのに急によそよそしくされるとは。



「さすがにご領主様と呼ばれるのはな…街の顔見知りは気軽に名を呼んでいる。ゼイラルも前と同じく呼んでくれてかまわない」

「ありがとうございます」

「それと。これから私は時間をかけて口説かれるわけだが」

「は、はい」



私の一言に緊張した面持ちになるゼイラル。この様子なら言った方がいいだろう。

……ハッキリと本音をいうと、相手からの好意が分かった上で口説かれるのは、ドキドキはしないがワクワクはする。

これから伝えることは、いうなれば楽しみをくれた『お礼』だな。



「初めの1歩は手助けしよう」

「?」

「堅苦しく話されるのは貴族を相手にしているようで好かない。気軽に敬語なしで話しかけてくれ。まぁ、敬語がゼイラルにとって素ならば仕方ないが」



よくある『そろそろ敬語やめませんか?』『そうですね』の流れをせず、『いつでも気軽に自分の話しやすいように話そう』ということだ。

私の方はすでに砕けた口調で話しているが、ゼイラルがいつ敬語をやめるかを私の前で悩ませないためだな。


……今でこそ素で話しかけてくることもあるレオに数年前、敬語なのか尊敬語なのか分かりづらい話し方をされた。

彼としては私の意志を汲み取り、仕事以外で話す際に敬語を取ろうと頑張ろうとしたが、いきなり素で喋りかけていいものか悩み、もしそれが仕事にまで影響したら…と思ったそう。


だからゼイラルには先に言っておくことでいつでも素で喋っても良いということを伝えたかった。



「そ、その。ど、努力を惜しみませ、惜しまない、ですけど、ロシュさんの方が年上なので…」

「……まぁ、そこは慣れだろう。用件はすんだな?」

「は、はい!本日はお時間いただき、あっ、と。えっと、」

「敬語でもいいからハッキリといえ」

「…はい。本日はお時間いただきありがとうございました。失礼しますっ」

「あぁ」



最後は言い方がきつめだったと自負しているが、ゼイラルはそれを受け止め、しどろもどろな言葉を普段通りへと戻した。

いくら私が気軽にと言っても無理にやろうとされると、こちらは『合わせられている』と感じ癪に障る。

ならば敬語のまま徐々に改善していってくれた方が……。知人関係として付き合いやすい。


私はゼイラルの去っていく背を見送りながらそう思った。




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