244.主人の知らない新人育成
ミナージュが来てから、指導のためバルナが屋敷の指揮権をクエリアへと頼んだため、たまに聞こえる指示の声に少しだけ違和感を感じる以外は、何事もない日々が続いていた。
――アリエス視点開始
現在のロイ様は、屋敷と騎士寮の辺りしか行動範囲がないため、何事もない日々が続いていると思ってらっしゃるが、それ以外の場所『メイド寮』と『執事寮』では毎回叱咤の声がが続いているらしい。
私も日のほとんどをロイ様の側にいるため聞いた話になるけれど。
――ミナージュとザンクの1日は、長達のノック音で飛び起きる所から始まる。
使用人に必要なマナーの基礎が2人にはあったため、補う程度の指導ですんだが、生活習慣はここに来てから慣らすものとなる。
専属ではなく常駐での使用人となることが決定しているため、夜は早めに寝ることが出来るが、朝4時という起床時間は2人にはつらいものとなっていた。
この家の常駐は屋敷に留まり続け働く事ではない。
グランツェッタ家が所有する敷地内の管理し、保つことが仕事。
メイド、執事が主ににやることは、『清掃』と『洗濯』の2つ。
細々とした仕事は臨機応変の対応となる。
しかし清掃と洗濯はグランツェッタ家に限らない。敷地内にある3つの寮内も含まれる。
まず清掃に関してだが、屋敷の清掃をさせるには手際が悪いと言われたザンクは執事寮で、サジリウスに随時直されながら指導を受けていた。
彼は一通り言われた後に直しを入れるより、間違った場所をすぐに指摘し直させる方が覚えるという。本人もそれに納得し、指導されている。
が。元々掃除など掃いて拭けばいいと思っていたザンクにとって、場所によって道具を変えやり方を変える清掃法は、いくら納得しやっていても
そしてミナージュは洗濯が苦手だ。
この国の貴族の屋敷では洗濯板ではなく洗濯機が流通している。服を入れ水を溜め、洗剤を入れておけば、洗濯機の中の寸胴が回転し、遠心力も相まって汚れを落としてくれる。
ここまでは彼女も出来る。しかし服にも一緒に洗ってはいけない種類があること、何より『洗濯』の中に裁縫と体力が必要なことを知らなかったらしい。
裁縫は解れや金具を外して洗う時のために必要なもの。
体力は洗濯機から取り出し、脱水機にかけ、干す。この行動だけでかなり腕力を使い、乾燥場所に運ぶため足腰も必要となる。
いくらミナージュが舞踏で筋力がついていたとしても、使う筋力が違ければ当然筋肉痛となる――
この屋敷でのスパルタ指導では、休ませるには休ませるけれど、翌日筋肉痛でも同じ事をさせるため、新人にはキツいだろうと私は思っていた。
それにもしこの事をロイ様が知ったなら、現場での実践もあった方が良いと、基礎もままなってない新人にやらせる可能性があったため、新人育成に関して聞かれても『なんなくこなしていて優秀』だとしか今は言えなかった。
けれど、長2人の指導を受けたなら『優秀』になることに違いはない。
――アリエス視点終了
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冷蔵庫、冷凍庫、洗濯機、乾燥機、オーブン、明かり…などが244話時点で現在開発されている電気製品。
(この小説内で)