241.癒されること
その後。
ミナージュへここに仕えるための話をしようとしたが、アリエスに『後はバルナ様にお任せましょう』と言われた。
彼女の裏の意味を読み取るならば『今日は休みと言っていたでしょう。休みますよ』だ。
まぁ、現場の人間に聞いた方が良いとも思ったため、ミナージュとは給金の話だけをし、アリエスへバルナを呼びに行かせると私は応接室を後にした。
――グランツェッタ家近く
趣味に熱をいれ、休みを満喫しようとも思ったが、私ふと癒されたくなった。
『好きなもの』とは心や体で満足感を得るもの。
『癒される』というのは、五感のどれかで心休まるもの見つけること。
そして今の私は満足感が欲しいのではなく、心休まることを望んでいた。
しかし我が家の周りは自然豊かで街へも距離があるため、家から少し離れれば、花畑が目の保養となり、耳を澄ませば鳥の囀りや木々のさざめきが聞こえ、晴れてさえいれば野原に寝転り穏やかな陽気に包まれるだろう。
が。
私が欲しいのは自然の癒しではなく、温もりの方だ。それも子供特有のな。
「ふ。相変わらず可愛いな」
「あーぅ?」
現在私は我が家の近くに建てさせたシリウスとメダの家へと来ている。
そこには約1才となる2人の子――リスラがベビーベッドの上で寝転んでいた。
私が手遊びをするとそれを掴もうとする仕草に、ほんわかとする。
捕まえた手を胸元に持っていき、大事そうに掴んでくる仕草に笑みが溢れる。
さて。
私はリスラを抱き上げると、そのままベビーベッド近くの絨毯の上へと座らせた。
「リスラ、おいで」
私はリスラから少し離れると彼女の名を呼んだ。
「―――ぅ」
リスラは這い這いをしベビーベッドの柵を掴み、腰を持ち上げると、柵を掴んだままゆっくりと足を動かし始めこちらへ向かってこようとしていた。
自分の名前を理解し、呼び声の方へと向かってくる姿は微笑ましく、この前より足を動かす速度が上がっている事が分かった。
そのためリスラはすぐに私の膝元へと倒れるようにして乗っかってきた。
決して自分の子ではないが、子供好きには癒しでしかない。
私もいつの日か我が子を授かれるのだろうかという不安も過ったが、今はリスラで癒されることにした。
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子の成長速度は遺伝や栄養摂取量、運動量、睡眠量でも様々です。
リスラは一般的には鑑みると少しだけ立ち歩きが遅いのかもしれません。
明日は日曜日と4のつく日が被っているお休みの日。
また月曜朝9時にお会いしましょう!




