238.それは書物となりうる
――執務室。
――あれから約1週間。
プリリル公爵家に対して発生した全ての書き換え、引き継ぎが終わった。
プリリル公爵家はプリリル子爵家へ降格。
街の長には、数代前まで公爵家であった伯爵の者が務めることになり、産業指導者はその産業で事務仕事を任されていた子爵の者が務めることになった。
そして昨日。
産業指導者となった子爵家へと赴き、引き継ぎを終えた。これでしばらくは仕事忙しくなることはないだろう。
「終わってみると手持ち無沙汰だな」
例えるなら、十分な運動をして、さぁこれからももっとやるぞという時に雨が降りできなくなってしまった、というような感情だな。
まだ動きたかったのだが、一般的には十分な活動良だったから疲れてはいる。
「ロイ様。お仕事がお好きなのは分かりますが、休みたいとも仰っていたではありませんか。宣言通り、休みましょう」
「…そうだな。あった仕事もついでとばかりにやってしまって新たに来ない限りやることがないからなぁ…少しは残し家おけば良かったか」
「ロイ様が早くお仕事をすることによって、領民様の生活改善が早くなります。それは良いことなのでは?ロイ様も休めますし」
「思考が仕事をしたい方へといくのは今だけだ…もう少しだけ仕事への想いを募らせてくれ」
休みたいと思っていたことも事実。事実だが……なぁ。
私はそっと書物へと視線を向けた。私の休みは『寝る』ではなく、『読む』か『身体を動かす』だからな。
今は読むことで仕事はないことを実感したいのだ。しかし、第3者から見ればこれは――
「…では。そのお手元の資料をお渡しください」
「これは、資料じゃない。書物だ」
資料とも呼べる。だが、私にとっては書物なのだ。
「ロイ様にとっては、でしょう。物語のように読むものではありません」
「歴史書はその時代のことが書かれているじゃないか。それと同じだ」
この書物には領地で行われている整備状況や領地に出入りする商人や旅人などの割合などが書かれている。
整備が終わる日数を計算し、人件費や整備費用などが予算内にぴったりと収まった時のことを思い返す事のできる立派な書物だ。
「…剣術はしなくて良いのですか?」
「それがな。皆が私がいるとイブランの指導に熱が入るからと言われて打ち稽古を断られた。たまには書物を読んだら?とも言われたな」
断ってきたのはメダ。書物を読むように進めてくれたのはレオだ。
シリウスな剣術をできないのを残念がっていたが、私もその時は残念でならなかった。今は楽しくなってきたがな。
「参りました。暫くは書物をお読みになられているのですね?」
「あぁ」
「ではのちほどお飲み物をお持ちします」
「目が冴える物にしてくれ」
「はい。かしこまりました」
アリエスをやり込め、私は数ある書物を昼まで読みこんだ。
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ロシュは地球惑星上に存在する行動言動を当てはめた時、『ワーク・エンゲージメント』に該当すると思われます。
多分。
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