236.近いが億劫ではないな
おはようございます!
風呂を済ませた私は髪を乾かし終え、アリエスと共に屋敷へと帰ってきた。
ライラは騎士寮に残り、勉強をしてから帰ってくるそうだ。まぁ、勉強などどこでやろうと自由だからな。
我が家と入ると玄関口にはバルナ、ベガが私を出迎えてくれた。いや、出迎えたというよりは、私達がタイミング良く入ってきたというところのようだ。
手に何も持っていないということから、急ぎの仕事はないのだろうと思った。
「お帰りなさいませ、ロシュ様」
「おかえりなさい、ロイ様」
「ただいま、バルナ、ベガ。早速で悪いが急ぎの仕事だ。バルナはサジリウスを執務室へ連れてきてくれ」
「かしこまりました」
「ベガもレイラのところへ行ってクエリアを連れてきてくれ」
「はい」
出迎えの挨拶を受け終えると2人に伝令を頼んだ。
プリリル公爵に渡す書類を2日以内に私を1人で作ることは無理だ。使用人の手を借りれば何とかまとめる事ができる。
ならなぜ公爵に2日後と言ったのか。
私は仕事は苦にならない。むしろ好きな方だというのは、使用人を含む皆が知る事実だ。
だが好きなものでも時には休みがほしい。『仕事』という1つ間違えば、その直す時間を取られてしまうような責任重大な作業に、気を張りすぎるのもダメだというのを学んだのだ。
いくら好きでも、趣味と言えてしまっても。
ただでさえ王都から戻ってまだ数日しか経っていないのだ。
ひとつの『爵位』を変えることくらいで時間を取られたくない。これが領民の生活面の書類ならば、寝る間も惜しんで休息をそこそこに、ひとつひとつに目を通して喜んでやろう。
だが、それ以外ならば誰かの手を仮り、協力し急ぎ終わらせる。
幸いにもバルナ、サジリウスは先代から我が家に仕え、学もあったため、改善作の提案や反対意見などを述べることを許されている。
使用人が口を挟めるなど本来ならあり得んが、まぁ我が家ならばあり得たとしても然程驚かれることはないだろう。
実際に目にされたら少しは嫌みを言われるだろうがな。
結論として。やるはずのなかった仕事をやるはめになり、それを急ぎ終わらせたいがために、使用人の手すら借りるということだ。
クエリアに関してだが、彼女は2人に次ぐ字の綺麗さで、言われたことを一言一句覚え書き記してくれるだろうと、選出した。
さすがは2人の子だな。
別に私の専属使用人達が使えないわけではない。今回は書類作成をする我々の補佐として動いてもらいたいだけだ。
……まぁ、もしも書類作成を手伝ってもらうとしても、あんな丸く可愛らしい字を書くベガにはそれ以外をやってもらうがな。
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