230.プリリルとの4
痴話喧嘩を静観していた私達だが、プリリル公爵の話を聞いてもなお修まらない夫人の怒りが見てとれていた。
プリリル公爵が何か言う度にそれが増していたが、ついに夫人がこちらを向いた瞬間はまるで『コイツのせいで!』みたいな表情だった。
また怒りの矛先がこちらに向くのか。今度は何を言われるのやら。
そう飽き飽きした心構えで夫人の言葉を受けた。
「――グランツェッタ公爵様?貴方はライラくんがユユモを見定めたと仰っていたけれど、それは本当にライラくんの本心なのかしら?」
「どうしてそう思われたので?」
「だって。ほんの数日ユユモと一緒にいただけで、ユユモの全てを知った訳じゃないのよ?それなのに合わないっておかしいわ。あなたがライラくんに私達と関わりたくないとでも言ったのではなくて?」
ライラの気持ちに嘘はないが、プリリル家と関わりたくないというのは嘘ではないため、強く否定できんな。
夫人の先程のまでの感情任せの怒りは何処へいった?淡々と告げる者ほど警戒が必要だ。
「……」
「ふふ。やっぱりあなたの指示だったのね」
間を開けてしまったことで、私が夫人の言葉を『肯定した』と思ったようだ。
「私は指示などしていません」
「『指示』はしてないのね。ならグランツェッタ家の当主として『命令』したのね。だってライラくんは養子ですもの。あなたの命令に背いたらレイラちゃん共々追い出されると思ってしたがったのかしら?」
「夫人。私はそんな事――」
「可哀想なライラくん。そうだわ!」
私の言葉が遮られたのはもう何度目だろうか。
そんな事を思ったのも束の間。名案を思い付いたとばかりに嬉しそうな声をあげる夫人。
もう何を言っても聞いてもらえないのなら、全てを話させてからキッパリと突っぱねれば良いか。
「ライラくんを我が家に婿養子として向かいれるのはどうかしら!」
――夫人が放った言葉は、この応接室にいる夫人以外の人間が驚愕するに値するものだった。
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ちなみにサブタイトル『プリリルとの』はまだ使います!
また明日はお休みです。
6/1月曜朝9時にお会いしましょう!