215.飽き飽き――早く関わりを絶ちたい
玄関に向かいライラ達ど合流し、応接室へ行くまで中からプリリル公爵親子が出てくることはなかった。
てっきり、ユユモ辺りが『もう待てない!』と言って出てくるかと思ったのだがな。要らぬ心配だったか。
レオの方からノックをしてもらい、応接室へと入っていく。
「ライラ様っ!」
ライラを見た瞬間、嬉々としてソファーから立ち上がりこちらへ小走りしてくるユユモ。
そんな彼女を父であるプリリル公爵は微笑ましげに見ていた。
部屋で待っていただけで、はやる気持ちはあったのだな…
私は私でライラの心配をしつつ、作業のようにプリリル公爵親子を退散させる手だての確認を頭の中でしていた。
その間にユユモがライラへと抱きついた。
『淑女』としては全くもってあり得ない行動だが、咎める者は誰もいない。
この抱きつきは、ライラがプリリル邸にいる時からあった事のようで、最初の頃はライラが咎めるような言葉をかけていたのだが、全てを自分の言いように受け取ってしまったために、全く効力がなかった。
しかもライラの側にいたアルタが予定を言い訳にユユモを側から話そうとすれば、母親がボソッと『使用人の分際で逢瀬を邪魔するなんて』と口走ったことから、立場を考えたライラの判断により、手助け不要としたらしい。
それであんな手紙を送ってきた、というわけだ。
休む暇が寝るときだけだったならば、気が休まらなかったことは容易に想像がつく。
…そろそろライラから離れてもらおう。
「プリリル公爵。一目会えましたよね?」
「会っただけですよ?少しくらいなら話しても良いでしょう?」
ライラは現在『私ね!私ね!』というユユモからの構って攻めにあっている。
「今ユユモちゃんがしているでしょう?それに座り直して話始めたら『少し』でなくなるのでは?娘さんの事が分かるのなら、後日話し合う方がいいでしょう。ライラも玄関から来てすぐにここに来ているんです。客人に気負うことなく疲れをとらせてやってください」
「……。わかりました。ユユモ~。今日はもう帰ろう。今度またライラくんを我が家へ誘おう」
「えー!」
――ユユモはギュッとライラの服を、離したくないとばかりに強く握りしめた。
彼が飽き飽きした顔をしているとも知らずに。
「今帰れば、今度必ず今よりいっぱい話せるぞ?」
「ん~……じゃあ帰る!ライラ様!またお会いしましょう!」
「えぇ」
悩んだ末、話し込む事をせずに帰ることを選んだプリリル公爵は、ユユモを納得させた。
プリリル家の馬車までの先導を担ったイブランとプリリル親子を玄関まで見送ると、扉が閉まった瞬間――
「ライラ。上でアルタが待っている」
「うんありがとう」
ライラは足早に風呂へと向かっていった。
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