214.お気に召されなかった
おはようございます。
外に出た後の行動はそのまま玄関に向かい、待機しててくれと伝えてあったため、私もアリエスを連れて玄関へと向かった。
1階に降りる時下が見えると、ワゴンを押したスロウが応接室の方から調理場へと帰るところだった。
「スロウ」
さほど大きくない声で名を呼べば、きちんと私の声が聞こえていたらしく、スロウがこちらに顔を向けた。
「ロシュ様……」
振り返ったスロウの顔は暗く、男気ある通る声もか細くなっていた。
そんな彼を見た私は最初に、
「ご苦労だった」
労いの言葉をかけた。
そのあと私は外にライラ達が待っていると分かっていながらも、スロウの話を聞いた。
外も寒くないから待たせられるというのと、応接室に向かうまでの時間稼ぎになると思ったのもある。
話してすぐにライラが帰ってきたら、家の中にいたのでは?と勘づかれるやもしれない、と。
「…甘味はいつでも作ってあったので満足していただけるものを提供出来ました……」
「何があった?」
私はさらに続きを促した。
「まぁ、はい。どれか好きなものを選んでお食べくださいと言ったのですが、その中の1つに嫌いなのもがあったようで『嫌いなのになんであるのっ!』と……」
「そうか。事前にこちらも聞いておけばよかったな。すまないな、スロウ」
「いえ。大丈夫です。どうにかプリリル公爵が機嫌をとってくれましたので…」
「プリリル公爵も癇癪を起こされたくはなかったのだろうな。ここは自身の家でもないのだから。…スロウ。何が残った?」
「ブルーベリーケーキです」
カパッと金属製の料理への埃や温度変化をなだらかにするためのクロッシュを開けた。
そこにはブルーベリーケーキが2切れ残っていた。多分下のワゴンにあるものは、プリリル親子が選ばなかったものだろう。
旨そうだ。……うむ。
「そうか。なら帰ったら私が食べよう。スロウの料理は――」
私はスロウの耳元にそっと近づき……
「――我が家のためにと、特化しているのだからな?」
「ふ。そうですね、ではロシュ様、自分はこれで失礼します!」
「あぁ」
近づき言う必要はなかったが、自分だけに言われているのだと思える満足感があるからなぁ。
だが信頼関係なくやってこられたら日にはゾワリとするだろうがな。
「ロイ様」
……まぁ、時と場所と人目は考えた方がよかったな。
私は後ろに控えていたアリエスに一言「ライラ達を迎えにいくぞ」と言って歩き出した。
今、振り替えれば睨みを私に向けていただろうからな。
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