213.忍んで表へ
ライラの自室に着くと、1番先にライラとレイラが顔をしかめた。
「もう2度と嗅ぎたくないって思ってたのに…」
「相変わらず振りまきすぎで…」
まぁ、2人の言っていることは理解できる。
「ライラ。そう思っているところ悪いが、プリリル公爵と…ユユモにあってもらう」
「え――」
私は先程応接室であったことを手短にまとめて話した。
最初は行きたくないなと行っていたが、レイラから『早く家から追い出してきて』という直接的な願いを聞き入れる形で了承した。
ライラには鉢合わせても問題はないように、屋敷の外に出てもらうことになった。
私達は、ライラの自室のベランダに移動した。
「緊急だからですからね?ロシュ様。やろうとしないでくださいね?」
「分かっている。だからそんなに不振な表情をするな、メダ」
「怒られるのは俺達なんですから」
「分かった、分かった」
ライラを抱えながらそう話すメダに、私はあしらうように返事をした。
『やろうとしないでください』と言われなかったらやろうとは思っていたからな…飛び降りるより安全なのだから、やっても良いと思うのだがな……
「では、降りますよ」
「うん」
今の2人の姿を物に例えるなら『井戸』だ。ベガは桶、ライラは水という感じだな。
手すり部分に、ロープで下に降りるための仕組みを作り、ライラの安全を考えてベガを仕組みの一部と考え、下ろす。
ベガもライラと共に一緒に降りれるしな。騎士1人でもいれば十分だろう。
「僕もお側にいたかったです…」
ゆっくりと下へ降りていく2人を部屋の中から不貞腐れたように見送るアルタ。
「プリリル公爵が帰ったら、すぐにライラを風呂に入れる。匂いはついてしまうだろうからな。その時のための準備をしておいてくれ、アルタ」
「確かにそれは僕にしか出来ませんね!僕、ライラ様の執事ですから!」
「あぁ。数分したら下に降りないように行動を許可する」
「はい!」
そんなアルタに私は『アルタにしかできない』という意味に聞こえる言葉をかけた。
聞こえるように言っただけで『アルタにしかできない』とは言っていない。だが、今はそう聞こえてくれた方がいい。
彼はライラと離れると執着をさらに露にするからな。
見ているこちらからすると、子供の独占欲に見えるため、どうしてもアルタにも甘くなってしまう。
……ライラには申し訳ないがな。
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明日は日曜日なので、お休みです。
また、月曜日朝9時にお会いしに来て下さい!!