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210.突撃訪問


髪を乾かし終えた私は昼食後、執務室へと戻り書類整理に明け暮れていた時。


――コンコン。



「入れ」



入室してきたのはサジリウスだった。

てっきりアリエスがお茶でも持ってきたのだと思ったのだが違ったようだ。



「失礼します。ロシュ様、お客様がお見えです」

「客?」



いつも以上に淡々と喋るサジリウスの言葉に、そんな予定なかったはずだとが、忘れているのか?と一瞬思案するが、やはり誰かが来るなんて予定はない。


私はサジリウスに『訪問者は誰だ』と聞いた。



「プリリル公爵様です」

「……それは本当か?」

「はい。玄関にてお待たせするわけにもいかず、応接室へとご案内しています。お時間がかかることも伝えてあります」



私の言葉にサジリウスが、付け足して対処済みの行動を話した。


この事実にもうため息がでる。

帰って来てから見た手紙の中にプリリル公爵からの訪問をする、などというものはなかった。

使用人達からもそんな報告はされてないから、完全な突撃訪問だ。


それに今になってだが、サジリウスからプリリル公爵愛用の香水の香りがすることに気づいた。



「理由は存じ上げませんが、ライラ様をお探しするような言動が見られましたので…先日の件かと」

「はぁ、諦めてなかったのか」

「異国の王太子殿下と我が国の王太子殿下の生誕祭があり、身を引いていただけなのでは?」



確かにライラが辛いと言ったから、ランスを理由に戻ってきてもらっただけだからな。……そのまま諦めてくれればよかったものを。

私は領地に住む者を無下にはできない。それが今、こんなにもむすこを苦しめる原因になろうとは。


はぁ。



「もう王族と関わるような人物はいないしな。ライラとの婚約話をするなら今だろう……はぁ。まったく、昨日の今日で良くこれたのもだ」

「関所に見張りを置いていたのでは?」

「あり得るな。ライラは?」

「レイラ様と共に部屋にいてもらっています。また、ライラ様専属の使用人も共に」

「出掛けている事にしたのか」

「はい。昼食後で良かったです」

「だな」



前だったなら鍛練中の訪問となったからな。鉢合わせだ。


私は席を立ち、プリリル公爵のもとへと向かうことにした。

待たせることは伝えてあるということで話し込んでいたが、そろそろ向かった方がいいだろう。



「それとプリリル公爵が帰ったあとは、何よりも先に匂いを消せるように準備しておいてくれ」

「すでにスピオンに頼んで(こう)を作らせています」

「仕事が早くて助かる」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



(こう)――花や樹から抽出し、固め、焚く香り付きの煙。

(小説内で使用される『香』の解釈)

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