209.私のメイド
おはようございます!
――昼過ぎ。
イブランによる鍛練が終わり、シャワーで汗をざっと流しつつ、先程の事を思い出す。
あのあと始まったイブラン対他4人による剣術対戦。
鍛練をしつつだったため、途中途中は見れていないが、私が見た気配を感じると、オリオンが転がってきたことには驚いた。
まぁ、避けたがな。
どうやらオリオン以外は皆、『負け』を認められたようだった。が、彼はまだ『やれる』という判断をされたようで、そのあともイブランが『立て!オリオン!』と言われ、なんとか立ち上がってはまた転がるを繰り返していた。
剣術を終えたイブランに何故オリオンにあそこまでした?と聞いたところ、
『あいつの受け身の取り方が良かったので、つい見たくなって』
というなんとも自分本意な理由だった。
確かに疲労の状態であれだけ転がったらどこかを痛めてもおかしくないが、剣術終わりにアリエスから診断されたオリオンは『特に異常なし』といわれていた。
打撲すらなかったことをいま改めて凄いと思う。
私ですらいくつか痣が出来てしまったというのに。それを見たアリエスから怒りの視線と言葉をもらったことも思いだし、軽く身震いをしたため、思い出すことをやめ温かなシャワーへと意識を向けた。
シャワーを終えると、待ち構えていたアリエスに髪を乾かしてもらう。
その間に私が鍛練をしていた間のレイラの様子をバルナから聞いた。
何度か扉の外を気にする様子を見せた以外は勤勉にしていたという。
時々だが、金属がぶつかる音が聞こえていたそうだ。
「護身術くらいはさせてやればよかったか?」
「それは今日でなくとも良いでしょう。今のままでも十分レイラ様は護身術を身に付けていらっしゃいます」
「だが、緊迫感覚は慣れておかないとな。いざというときに恐怖で――」
「強靭なる心を持つにはまだレイラ様成熟しきっていません。今そのようなことをすれば、淑女の感受性が失われてしまいます」
「……そうなのか」
「そうなのです。アリエスを見れば分かりますでしょう?」
「アリエスをか?」
「えぇ。10歳で貴方に仕えてから貴方の側にいすぎたせいで、ほぼ貴方の役に立つことにしか興味がなくなってしまっています」
「…そうなのか?」
「私が好きなことをしているだけです」
アリエスの言い方に私はバルナの言っていることが真実なのだと思い至った。
そう考え思い返せば、彼女とは良く話が合う。どんな話題でもついてくる。
そうか。私のためでもあったのだな……
嬉しいじゃないか。
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