207.言葉に裏などもうない
深く考えすぎてはいけません。
朝食後。
凄く不機嫌そうな表情をしたバルナから、イブランがやると言っていた鍛練の参加許可を得られた。
ライラとレイラもその場にいたため誘ったが、レイラには断られた。
ライラは動きやすい服に着替えてくるとすでに退室している。
「レイラ様をロシュ様のように凛々しくさせないでください」
「とうさま、私は別に剣術をしたくないわけではないのですよ!勉強があるので今回はお断りするだけですわ!」
「レイラ。何もバルナは私を侮った訳ではないぞ」
「え?」
疑問と驚きを含んだ声を出したレイラに、何故言葉を挟んだか聞くと、バルナの言葉を私への否定的な言葉とだとらえ。
曰く『レイラ様をロシュ様のように凛々しくさせないでください』という言葉をレイラは少しばかり深読みし、
『レイラ様がロシュ様のように男勝りになるわけないでしょう』と変換したのだそう。
凛々しいという言葉には『勇ましい』という意味も含まれている。レイラはそこを『男勝り』と変換し、さらに『男勝り』を私への侮りと思い、自分はそんな事思っていないという気持ちを伝えたかった、らしい。
「はぁ。レイラ。ここもう王城ではないからな。相手の言葉の裏を読まなくても良いのだ」
「は、はい。長くあそこにいすぎてつい裏んでしまいました…バルナの言葉に裏なんてないのに」
落ち込んだように目を伏せ悲しげな表情をするレイラ。
「あぁ、そうだ。バルナはレイラには立派な淑女になって欲しいから私を目標とするような鍛練をさせたくなかったんだろう?」
「その通りでございます。レイラ様の剣の腕前は承知していますが、それを極めてほしくはなく思い、ロシュ様へと言葉をかけました」
私はバルナの口から先程の言葉に込められていた意味を話させた。この言葉は裏の意味ではなく、先程の言葉を長くしただけだ。
「だそうだ。バルナ。今日の初めはまず勉強ではなく、我が家へと帰ってきたことを実感する所から始めさせろ」
「かしこまりました」
「レイラも分かったか?」
「はい!ありがとうございます、とうさま」
晴れやかな笑顔を見せたレイラ。
やはりこどもの笑顔は可愛いな。
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裏っぽくなっていれば良い。という形であります。