201.恋しかった我が家
――時刻は昼時。
再び馬車が止まると、外からドアが開くのを待たず私自らがドアを開け、外に出た。
「「お帰りなさいませ、ロシュ様」」
馬車の外は我が家の門構え。門が開いておりそよ門の中央にはメイド長・バルナと、執事長・サジリウスが出迎えてくれていた。
1週間と少し離れていただけだが、数年ぶりに会った知人のような久しい感覚を感じた。
「あぁ、ただいま」
「ロシュ様。外出中に来ておりました手紙を拝見させていただき、その中で至急のものはありませんでした。貴族様方からの手紙が何通か来ております」
サジリウスが手紙の仕分けについて報告をしてきた。
「後で見よう」
「ロシュ様、詳しい説明はアリエスに話していらっしゃるのでしょう。どうぞ。お行きください」
バルナは私がいまどこに行きたいのかを理解しているようだった。
「ふ、分かっているじゃないか。10分は出てこない。アリエスの説明で補足が必要ならライラかレイラに聞け。補足くらいはできる程度に情報は持っている」
「かしこまりました」
「アリエス」
「はい」
私の後に馬車から出てきていたアリエスに声をかけた。
「あとは頼んだ」
「かしこまりました」
私は他の馬車から降りてくる面々を背にし、屋敷の執務室へと向かった。
「あ、ロシュ様!お帰りなさいっす」
「あぁ、ただいま」
扉を開け玄関に入ると、待っていましたとばかりにサヤンキが挨拶をしてきた。
「いまスロウさん忙しいんで、俺がロシュ様への挨拶を頼まれたんっす」
スロウが忙しくしていると聞いて私は苦笑いをした。
「今日の昼と夜は豪勢になりそうだな」
「俺もこれから頑張るんでそうっすね」
料理人のスロウとしては帰還した雇い主に、腕をふるって旨いものを食べさせたいのだろう。
サヤンキも私が去ったらすぐにでも手伝いに行くのだろうな。
「そうか。私はしばらく執務室にこもる」
「了解しましたっ」
私はサヤンキと別れ執務室へと入っていった。
「あぁ、この匂いだ」
通気がされていて前までのインクの匂いはしない。
だが、壁に染み付いた匂いは除臭していないため、数時間も換気していなければ、匂いが香りだしてくる。
さすがにカビが繁殖していたなら壁紙事変えるが、インクの匂いだけのため、変えずにいる。
「さぁ、始めよう――」
私は机の上に仕分けられ積まれた重要書類を読み込んでいった。
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明日は『4』がつく日なので休みです。