197.思いふける
私は馬車へ向かっている道中のアリエスに、ザンクの使用人としての素質はどうか聞いてみた。
これから同僚となる者の意見は、あながち間違っていないだろうからな。
「素直という点では、他の貴族の使用人とは違うグランツェッタ家の使用人ともすぐに仲良くなれると思います。仕事中でなければ敬語も外すようになるとかと」
「そうか」
「はい」
「彼女の方はどうだと思う」
彼女とはザンクの恋人であるミナージュのことだ。
実は彼女も後日にグランツェッタ家の使用人になるべく向かってくる。
恋仲同士を無下に引き離したくはないからな。
それに彼女の両親は、ザンクの両親より話が分かる者のようだからな。
使用人に迎え入れたいと理由付きでいえば、ほぼ無条件で承諾してくれるだろうからな。
「…ただ、ロイ様への敬愛がどうなるかが心配です。シリウスな例もありますから」
「……そうだな」
『ロイヴァルッシュ様を語らう会』そんなところに入っているくらいだ。
――強い女性に憧れ師範となる女性を探すその過程で私を見つけ、泣きすがり付いて騎士となり、私の全てを知ろう朝から晩まで側に付き続けた――シリウスの比ではないだろう。
違う点は、シリウスは『強い女性』に憧れて、ミナージュは『ロイヴァルッシュ』という存在を敬愛しているという所だ。
憧れと敬愛は全く違うと私は考えている。
そのため、ミナージュがどう私に仕えるのかが分からない。
我が家にいる半分程の使用人は最初、仕事として仕えてくれていたからだろう。
「私の仕事中や睡眠時間の邪魔さえしなければ、な」
「そうですね」
シリウスは自身が貰ったら休日に、私に『朝から晩まで』付き続けたのだ。
迎い入れた彼女が私がいるときに執務室に出入りしているのは構わなかったが、私の全てを真似ようと書類の文字をじっと見続け、食事に立てば食器類の使い方、食べ物の噛み方など、私が1日にする行動全てを真似ようとしてきたのだ。
真似されると分かっていて見続けられるのは、不快だということをシリウスで学ばせてもらった。
だからこそ、ミナージュが似た行動を取るようなら、スパルタ式で色々と学んでもらうことになるな…
「ロイ様?」
「あぁ」
私の顔を見たアリエスが、私が何かを思いふけっていることを察して、そちらから呼び戻してくれたようだ。
それから私達はデネヴィーが持ってきた馬車まで、到着した。
手早く馬車に乗ってしまえば、追跡者など関係ないからな。
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明日は投稿お休みです。
雨で少しでも流されると良いですね。




