108.待つ間に
客室ですることをしたあと、部屋に鍵をかけてレイラのいる場所へと案内してもらうべく、塔の入り口で待っていた案内人の先導のもとへと向かう。
シリウスとオリオン、ベガは休息を取るようにいい部屋に残していった。
レイラは今、貴族の集う交流会にノアール王子殿下と共に行っているそうだ。きっちりとした雰囲気になる生誕祭前に、羽目を外すのが目的の交流会だ。
そこでレイラが、ノアール王子殿下の婚約者として紹介されていないと良いのだが………
私、ライラ、アリエス、レオ、アルタ、デネヴィーの6人は交流会の行われている場所へと到着した。生誕祭よりはあまり広くない場所だが、そこかしこに人がいる。
中に入ると、使用人達は他の家の使用人達と同じように壁際で待機する流れとなった。
パッと見ただけではレイラの姿は見つけられなかったが、壁際の一角に冷色系の髪色をした3人を見つけた。レイラにつけている使用人達だ。
私は話を聞こうとそちらへ向かおうとしたが、顔見知りの貴族に捕まってしまったので、ライラに行かせた。
基本使用人はホールの中心分布に、非常時や王族につかえる使用人以外は足を向けることはあまりいいとは言えない。もし歩いていたなら非常時だと言っているようなものだからな。
「ヴィ・グランツェッタ!いやいや、お久しぶりですな」
「えぇ。お久しぶりです」
愛想笑いをし適度にあしらいながらライラを待っていると、演奏が始まってしまった。
交流をするにはマナーやダンスなども見せる必要がある。そこで貴族の親達は自分の子をアピールする。
『どうだ?うちの子は?凄いだろう?欲しいだろう?』とな。
そもそも、生誕祭をアピールの場に使ってしまった過去があるから『交流会』何てものが開かれるようになった。
王族側が気にかけてくれた。というのは建前で、祝いの席を見合いの場にしたくなかったというのが、本音やもしれないな。他の者も自分の誕生会が見合いになったら、嫌だろう。
「――で、どうかな?ヴィ・グランツェッタ。うちの娘と踊ってはくれないか?」
「…えぇ。私でよろしければ。――お嬢さん、私と踊ってはいただけませんか?」
「はいっ!喜んでっ」
こうして私は、今回がデビュタント――つまり社交界デビューとなった彼の娘さんをダンスに誘いつつも、ライラの帰りを待った。
もちろん、相手は私が女性であることは認識済みだ。なぜ、女性である私をお嬢さんは初めてのダンス相手として了承したのかは、謎だ。
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2019年の更新はこれが最後となります。
次回の更新は、1月3日8時を予定しています。
皆様、本年はありがとうございました!
来年からもどうぞ『領地から離れる気はない(仮)』をよろしくお願いいたします!!
皆様が怪我のない年越しを迎えられますように。