102.言~げん~
我が家に着き馬車の中から皆が降りると、ドアを開けてくれたレオは、馬車を馬小屋のある騎士寮の一角へと向かっていった。
私はゼイラルとジャルにも騎士寮へと行くように促した。イブランなら今は中で寛いでいるだろうからな。
2人は返事と何故かお礼をいい、騎士寮へと向かっていった。
「お礼など言わなくていいのにな」
「機会をくれたことにお礼を言ったのだと思います」
叱られるための機会をつくってお礼を言われたことなどない。変だな、2人は。
「だが、機会などつくらなくても、いずれは誰かに叱られていただろうに…」
「えっ?」
疑問のようなランスの驚きに、私は話を続けるように言葉を発した。
「我が家の使用人は無駄に忠誠心が高いからな。気を抜いて主を守れなかったと聞けば――」
「絶対に主を守るとはどう言う事か~って説教してるな」
「あなたには言われたくないですよ。オリオンさん」
「俺はちゃんとしてるって。口調と態度だけで実力ないとか思わないでくれよな、アリエス」
屋敷を背にしていた私達は、途中まで主人の会話に気を使っていたアリエスやオリオンが、足音をさせないように近くまできていたとこに気づかず、少し驚いた。
まったく、気配を消すのはやめてほしいな。
さて。アリエスの出迎えは分かるが、オリオンは…ライラからうるさいとでも言われて離れたのだろう。
そこでアリエスと出会ったというところか。
「出迎えか?」
「はい。お帰りなさいませ、ロイ様。ランス様」
「あぁ」
「はい」
アリエスの帰還を出迎える挨拶に、私とランスは返事を返した。
「にしても今の話、ちゃんと聞きたいんだけどなー」
「あまりべらべらと話すものでもない。そんなに気になるのなら今から騎士寮へといけばいい。行けるならな」
「だからこうして、ロシュ様から聞きたいって思っているんですけどね?」
「こちらも言っているぞ?べらべらと話すものでもない、と」
私とオリオンの引く気のない押し問答は、横からすぐに絶たれた。
「あの、ロシュさん。別に話してもらっても構いません。それで僕にも何か助言などをくれればと、思ってます」
「助言どころか遠回しに2人が軽蔑されてもか?」
「今回は未熟者だったとして、大目に見てもらいます」
考えたものだな。イブランが言っていた未熟者というゼイラルとジャルへの肩書きを、主であるランス自ら使うことでそれこと遠回しに『そちらが言っていた未熟者なのだから、寛容な心で受け入れて』と。
「ふ。そうか。喜べオリオン。ランスから許可が降りた」
「分かってるって」
オリオンも、アリエスもそれを理解したようだ。
「アリエス、ダイニングで話す」
「かしこまりました。お飲み物をすぐにお持ちします」
「俺のもよろしくね、アリエス」
アリエスはオリオンの言葉を無視して屋敷へと入っていく。私とランスも続くように屋敷へと向かうと、オリオンもワンテンポ遅れてついてきた。
無視されたことで驚いたのだろう。
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