1.ロイヴァルッシュ・ヴィ・グランツェッタ ★
「どうか、結婚を前提にお付き合いしてくれませんか!」
「お断りする」
人生で初めて告白されたが、恋愛感情は持ち合わせているがな……
あってすぐにこんなことを言われても、好意的には捉えられない。
むしろ、告白するほどの魅力が私のどこにあるのだと問いたい。
~
時は数週間前まで遡る。
小鳥の囀りが聞こえ、陽が現れきった日の朝。
大理石の床に、黄金のラインが入っているワインレッドの壁。
10人は同時に食事が出来るであろうチョコレート色の椅子とテーブル。
ここは主に食卓を囲う場所、ダイニング。
――オークオレンジの髪に黄色い瞳、紺色を基調とした上部の服に白のパンツ、黒の底が低いブーツを履き――
その上座にあたる椅子に座り、食後であり仕事前であるティータイムを楽しんでいる私は、このグランツェッタの領主を務めている、ロイヴァルッシュ・ヴィ・グランツェッタ17才。
訳あって若くして領主となった。
幼くはあったが、それよりも小さい頃から勉強や身体を動かすことが好きで、他の子よりも倍は努力をした。
熱や筋肉痛で倒れることは日常茶飯事になってしまったが、数年も経つと知識が身に付き、筋肉痛も起こらなくなってきていた。
その頃に領主となったのだが、回りの手を借りれば、難なくこなせるくらいには『領主』として働けていた。
それから現在まで熱や病気、ケガなどで倒れたことはない。
メイドに持ってこさせ入れさせた、紅茶を一口飲むと、心が休まるのを感じる。
このお気に入りの紅茶の茶葉は、我が領地で取れるの物で取り寄せが早く出来るので、ほぼ毎日飲めるのがとてもありがたい。
野菜や果物、肉なども他領に売りに行けるくらいは育っている。
「ん…うまい」
紅茶の旨さに舌鼓しているとコンコン、と扉をノックする音がし「アリエスです」と声がした。
さっそく仕事を持って来たようだ。
「入れ」
この言葉が板に付いてきたくらいには領主に慣れてきた。だが、ダイニングでこのやり取りはしなくても良いと思う。今度は控えるか。
「失礼いたします」
扉を開けてこちらに向かってくるのは、
――青髪に緑の瞳、《藍色を基調としたワンピースに白いエプロンがついたメイド服》を着た――
メイドのアリエスである。
アリエスは、私の前に来ると、軽くお辞儀をしてから声を発した。
「当主様。お手紙が19通来てございます」
「多いな…」
私の通常の1日で最初の仕事は決まっており、メイドが持ってくる我が公爵家へと来た手紙に返事を書くことである。
ダイニングでやらなくてもと思うだろうが、夜まで仕事をするのが常で、仕事をする部屋である執務室の中は、引っ張り出した資料や細かく分けられた書類達でいっぱいで、書く場所すら無くなっている。
片付けられないのは父からの遺伝だと思っているから、治す気はない。
いつものことなので、朝のこの間に信頼できる執事に片付けをまかせてある。
ちなみにだが、この家に仕えている者は様付けか、主呼びが飛び交うが、私はどれでも構わないので、1つに言い方を変えるようにさせる気はない。
アリエスはたまに『当主様』と呼ぶ。それ以外は基本『ロイ様』と呼ばれている。
「差出人は全て貴族様方以上の方達です。領民の方からのものはありませんでした」
「分かった」
アリエスから手紙を受けとるとテーブルに手紙を広げ、その中から位の高い順に目を通していった。
爵位が高いほど回りへの影響が強いため、慎重に返事を返さなければならない――
「・・・」
正直いい話はなかった。素早く全ての手紙に目を通した私は、アリエスに指示を飛ばす。
「ライラとレイラに話がある。執務室に呼んできなさい」
私はアリアスにこどもたちを、指定の場所に連れてくるように指示した。
手紙の中に2人宛の婚約話があったのだ。幼い2人にはまだ早いと思ったが伝え忘れはしたくない。早めに言った方が良いだろう。
「かしこまりました」
アリエスはお辞儀をし扉を閉め部屋から出て行った。とても綺麗な所作である。
メイド長のバルナに仕込まれただけはあるな。
さて、私も執務室へ行くとするか。
手紙を持ちリビングをあとにしようとするが、冷えてしまった紅茶を見つめて……
残さず飲んでからダイニングをあとにした。
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オークオレンジは茶色とオレンジを混ぜたような色合いと作者は認識しています。
恋もよう(仮)連載中