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やりたいこととやるべきことが同じだったらと思った。
好きを仕事にしたいと思った。
スポーツ選手や、芸人、俳優。
特別な才能があったらと思った。
絵が描ければよかった。
文が書ければよかった。
速く走れればよかった。
腕力が欲しかった。
上手くしゃべれればよかった。
高く飛べればよかった。
ないものを得ようと苦しんでも、
あとからくる才能に一瞬で追い抜かれて
究めたかに見えても、
新たに開拓されていく道。
超えられない壁、ぶち抜こうと叩いても、入ったヒビはすぐに消える。
方向を変えても、すぐに行き詰って
そのうち進める場所さえなくなっている。
梯子もクレーンも、私には動かせない。
誰かが近くの壁をぶち抜くのを
待っているしかできない。
でも、私は
自力で破れないと分かっていても
壁を、叩き続ける。
せめて、風穴でも開けないと、
いられないと、思うから。




