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堂々と優先座席に座る、金髪の青年。
気が弱い僕には、それを指摘することができなかった。
飲んだドリンクのゴミをそこに投げ捨てたギャル。
僕は彼女が去ったのちにそのゴミを拾うのが、精いっぱいだった。
バイトの店員に威張り散らす中年。
僕は隣のレジに逃げることしかできなかった。
今、僕はそんなことを、こうやって書き記すことしかできていない。
或る時、海水浴場にテントを建てている男がいた。
モーターボートを乗り回すカップルがいた。
バーベキューをする親子がいた。
彼らに、一人の老人が声をかけていた。
「ここは、キャンプ禁止だよ」と。
「モーターボートは危ないからやめてくれ」と。
「バーベキューはしちゃいかん」と。
いわれた彼らは気にしないふりをした。
老人が言っていることは正しいのに。
間違いなんて一つもないのに。
正論は、絶対に通せるとは限らない。
大きい声はよく通る。一斉に出した声もよく聞こえる。
おかしいことに一人で立ち向かおうとしなくてもいい。
あなただけが、はねのけられて嫌な思いをすることはない。
そんな時こそ、頼ってほしい。友人を。親を。学校を。社会を。
世の中に敵はいない。いるのは、意見が、思いが、考えが違う他者だけだ。
近い思いのものは、必ずいる。
社会の理不尽に一人で立ち向かわなくていい。
社会には集団で、取り組むのがいい。
君の味方は、きっと君のそばにいる。




