表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

ギプスの王子様

作者: しいたけ

 彼は足を骨折し、慣れない松葉杖で登校してきた。


「ど、どうしたのよ~その足!?」


 私は思わず彼へと駆け寄った。しがない近所の親同士の付き合いとは言え、会話が無い訳ではない。


「何でもねぇよ……」


 素っ気なく席へと着いた彼を心配しつつも、私はその元気そうな顔を見て一安心した。普段は仲間とはしゃいでる目立つ存在だが、意外と繊細な所も持ち合わせており、変な所で悩んだりもする。


 体育は全て見学。とてもつまらなさそうな彼と見ていると、何だか可哀相だ。ふと彼と目が合うがお互いすぐに視線を逸らす。彼は後ろを向き頭を掻いた……。



「……よう」

「な、何!?」


 放課後、松葉杖で器用に歩く彼に声を掛けられた。間近で見るギプスは痛々しい限りだ。


「……お前今日誕生日だろ。うちの親がよ、何か欲しいの無いか……って…………」


 親同士が同級生だからか、普段から物のやり取りは多い。確か去年も何か買って貰った。何だったかは忘れたけどね。それにしても自分の誕生日の事すっかり忘れてたわ


「別に要らないわ」

「……いいのかよ。うちの親乗り気だぞ?」


「もう何かを買って貰う様な歳じゃないの。そうねぇ……窓から王子様がやって来てキスをくれるなら歓迎よ♪」

「…………」


 固まる彼を見て、思わず私も顔が赤くなった。ちょっと恥ずかしい事を言ったかもしれない!


「べ、別にこういうのは歳関係無いからね! 女子は皆憧れるのよ!」

「お、おう…………」


 私は恥ずかしさに耐えきれなくなり、足早に帰路へ着いた。




「今日で17か……」


 私は部屋の勉強机に突っ伏し、進路の事、勉強の事、将来の事、様々な事に頭を張り巡らせていた。


「特にやりたい事も無いしなぁ~」



 ―――ガッ ―――ギギ


 外から不思議な音がした。何かが登ってくる様な、そんな音……。


「……え? まさか―――」


 私は頭を起こし窓の方を見た!

 本当に王子様が来たんだと一瞬思ったが、私の目に映ったのはベランダのフェンスに掛かる、見事に汚れたギプスだった……。


「……何あれ」


 私は言葉が出なかった。足を怪我した彼がくそ真面目な顔で我が家の外壁をよじ登り、二階の私の部屋までやってきたのだ!


   (「開けて~」)


 窓ガラスの向こうで彼が小さく言葉を放った。私は仕方なく開けてあげたが、何か変なことをしようもんなら直ぐに大声を出すつもりだった。


「……いよぅ」


 彼は一本足でピョンピョンと跳びながら私の方へと向かってきた。しかし、見事に蹴躓き―――



  ―――ドン……


 私はベッドへと押し倒された。

 彼の重みが私の身体に押し掛かる。



「な! 早く退けてよ!」


 しかし、彼は何も言わない語らない。



 そして静かに私の唇を奪っていった―――

読んで頂きましてありがとうございました!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] このジレジレな幼なじみからの、窓から登場という王道的展開、好きです(*^^*) そのあとの流れも、もちろんラブキュンで決まりですね^ ^ 王道は不滅です! [一言] このたびは企画ご参加あ…
[良い点] (/ω\)イヤン ラストに盛大!「キュン」させて頂きました! 「ギプスの王子様」…いいですね! 傷を負っているのに愛する彼女の為に一生懸命。 とても短い作品なのに伝わってくるものがある掌編…
[良い点] 王子様にはなれないけども、強引にも近付こうとする彼が笑いを誘いますね。 面白かったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ