従者の憂い
ご両親から蝶よ花よと愛し慈しみ育てられた我が主は、怒りや憎しみという汚らわしいものとは無縁のまま純真無垢な大人になられました。ただ…それ故に他者を疑うことを知らぬのが、わたくしの心配の種でございます。
こんなことを言えばわたくしは叱られてしまいそうですが、時には金目の物を盗られ、時には傷だらけのお姿で、ええ、泥だらけの時もありました。いかにも悪さをされて戻られる主を、今ではもう見ていられないのです。
なるほど、そうですか。しかしこうも毎日私の家に忍び込み部屋中を物色されては困るんだ。まるで自由気ままな猫のよう、怒鳴られようと悪びれる様子もない。ご両親の気が知れないな。私は貴方が主かと思いましたよ。
ズル賢い猫の種族と主を一緒にするなんて聞き捨てなりませんな。部屋の件、誤解でございます。主は貴方の鳥籠を毎日掃除しているのですよ。餌の入れ替えもね。おや、主が呼んでおられる。すぐ行きますよ。わんわん!