【いつの間にか】
「――リエスさん! リリエスさん! ねえっ、起きてるの? …! リリエスさん! 」
そんな声がして、リリエスはハッと目を覚ました。目の前で声をかけてくれていたのは、花華であった。
起き上がって周りを見ると、他の三人の姿もあった。みんな、安心したような顔をしている。
だが、やはりそこに、自分の大切な人は、いない。
「―――リリエスさん、何があったの…? 音がして、気付けばここでリリエスが倒れていて…」
冷静な声音で、ルトは言った。
「リリエスさん、もう一日も寝てたんっすよ!? …体、大丈夫っすか…?」
続けてカイトも、心配の言葉をかける。
リリエスは、あの後完全に意識を失い、走馬灯のようなものを見ていた。憎悪の感情が爆発したのだろう。
「…破壊魔の駆逐に疲れ、倒れてしまったんだと思います…心配かけましたね」
リリエスは勿論、真実を口にはしなかった。
話せば長くなるし、早く他の破壊魔の状況も見なければ、この悪夢世界は悪化してしまうからだ。
「…さ、朝食は冷蔵庫にあるはずなので、温めて食べて下さい。私はまた、破壊魔を――」
「リリエスさん、休んだらどうっすか…? 倒れてしまったんだし、少しは…」
「…そうだ。今休んでおかないと、破壊魔が沢山発生したときに駆逐できなくなってしまうんじゃないか?」
「っ、確かに駆逐してくれる仲間は、他にいますけど――じ、じゃあ、ひ、昼頃に … 休みますね」
「うん、その方がいいよっ、リリエスさん。じゃ、みんな、朝食たーべよー!」
「おーーっす! …あ、リリエスさん、いってらっしゃいっす~!」
「いってらっしゃい…リリエス、さん」
そんな会話をして、四人は冷蔵庫の近くに寄り、何を食べよう、とか、些細な会話を始める。
自分を心配してくれる者がいて、元気づけられ――。少しリリエスは、勇気を取り戻しつつあった。
「(―――お兄様……何処かで、また―――)」
リリエスは、いつの間にかそう思うようになっていた。
そして――――
「――っ、おりゃああああああああああああっ!!! …くっ、霧…!! 邪魔っ!!」
「破壊魔の名残の、血の霧…紅霧ってとこかしら…これはかなり厄介ね…吹き飛ばすしかないわよ。」
「もおおおおおおおお!! …はぁ、しょうがないかぁ…。いくよ!」
「ええ、全て吹き飛ばす勢いで波動を――――!!!」
「「『霧払波動』っ!!」」
何処かで懸命に破壊魔との戦闘を繰り返す、見知らぬ二人―――。この二人もまた、破壊魔を憎んでいるのだろう。