天戒の戦闘機
【零・人間・■川■■】
戦いの音がする。
誰かが散っていって、何かが死んでいく。
断末魔、金属音、爆発音…
彼は地に伏せっていた。
その青い空着を染める赤の量は、じわりじわりと広がっている。
背中に突き刺さった金属の破片が、貫通しているのだ。
…
誰も俺を覚えていないのだろう。
もうすでに、脳内に入ってくる情報量が少なくなっていく。
ものすごい時の流れの中で、自分の死が無くなっていくのを強く感じて、寂しくなった。
もう、ファートゥムの声も聞こえない。
もしかしたら、妖樹に突っ込んだ衝撃で、回路がすべて吹っ飛んでしまったのだろうか?
だとしてもリペアできる傷なら、俺がいなくなってもやっていけるだろう。(それも政府が回収部隊でも送ってくれればの話なのだが)
どうせ死んでしまうのならば…。
最後に聞きたい。俺の相棒…。
なぁ、幸せかい?ファートゥム。
ファートゥム、お前に乗って、俺は、何千、何万もの敵を打ち取ってきた。
撃って、捕らえて、削って、時には自分の手で。
だがしかし、たくさん打ち取った分に比例するかのように、たくさんの仲間も死んでいった。
鳴り響く高い金属音が、耳から離れない。
両親の、あの死に顔と絶叫が、まだ消えない。
けれど
この戦い、何か気にならないか?
ファートゥム、お前、どこで生まれてきたんだ?
俺にしか乗れない戦闘機なんて、政府が用意するはずもない。
よく考えろ、これは何との戦いだった?
アイツらは、妖樹と呼ばれた裏世界のあれは、なんだ?なんだったんだ?
おれは、なんのために戦ってきた?
最初の目的と、今の目的は、違う。
くそ、死に際に生きる目的ができてしまったじゃないか。
ふざけやがって…。
耳が聞こえなくなってきた。
痛みはもうすでにない。流れ出た血液が体を浸す。これはもう致死量だな。
もう終わりなんだと思うと唐突に笑いが込み上げてきた。
もう死んでしまうのに、いきたい、と。
もう時間みたいだ…。
さようならファートゥム。また来世。
pipipipi…
【GOOD LUCK】
*
20■3年 ■月 ■■
対敵空軍 人材管理署
■川 ■■少将の戦死について
■月■日、作戦コード【C:■■8】にて音信不通。
確認■び、死体・戦闘機の破片の回収部隊の報告によると、■■少将専■戦闘機【フ■ー■■ム】の本
体・破片■■■からなかった。
また、■■少将の遺体も見つからず、残っ■■■のは多■■血痕のみであった。
交戦した■■われる完全■■■■体の残骸■■量に確保■■■とができた。
対敵空軍 ■川 ■■少将の戦死による二階級特進をここに認める。
対敵空軍人材管理署 葉山 三津