5話
2件目、代筆依頼
「す、すみません。こういうのは自分で書かないと……って思うんですけど、どうしてもあと一歩が踏み出せなくて……」
「そういうこともありますよ。でも、本文は自分で考えてくださいね?あくまで私は代筆ですから」
「は、はい……ではよろしくお願いします」
私は早速彼女が紡いでいく愛の言葉を書き留めていきます。てか、これすっごい恥ずかしいんですけど!『あなたのことを愛しています』とか『あなたのことだけを考えています』とか……あとはもう、いうことすら躊躇われるような恥ずかしい言葉を綴っていく。
そして1時間ほどして書きあがりました……合計で15枚もの手紙になった。
「ちょっと長すぎませんか……?」
「いえ!このくらいではあのお方に私の思いは届きません!これでもかなり減らした方なんですよ!?」
「へ、へぇ……ち、ちなみに誰に出すのか聞いても……?」
「え!?そ、それはその………様です」
「え?」
「そ、その……者様です!」
な、なんだろう……とっても嫌な予感が…………
「賢者様にです!!」
「うん、これ、私が責任を持って渡しておくから。このままくれる?」
「い、いいんですか!?つ、追加料金とかは……」
「いいです。私が勝手にやることですから」
そう言って私はその人の家から逃げるようにして出て行った。
3件目、清掃依頼
「うっ!」
西区に到着した私は思わず鼻を摘みました。臭すぎです……
「嬢ちゃん……大丈夫かい?本当はダメだけどなかったことにもできるんだよ?」
心配したギルド職員が声をかけてくれました。
「いえ、これは私が受けた依頼ですから。ちゃんとやりますよ。それにやり方はいろいろありますから」
そう言いつつ私はカバンから布を取り出してそれに《空気清浄》を付与して口と鼻を覆うようにして顔につけた。
「じゃあ始めますか!」
まずはドブの中の泥を押し流す作業。本当なら少し外れたところにある井戸から水を汲んで来てそれを流すという作業を繰り返すのですが私はそんな面倒なことはしません。私は水の魔法を展開して泥が飛び散らないよう水を細くして溝に流し込んで行きます。
「うん、これくらいかな?えっと次は……」
溝の掃除が終わったら次は………1番面倒なところですね。えっと……トイレです。流石に男性用の方は《消臭》だけにします。入りたくないので。私は比較的綺麗な女性用トイレに入り、泥と同じ要領で綺麗にしていき、最後に《消臭》をして終わりにします。
「これでいいですかね……」
溝もトイレも最初とは見違えるように綺麗になったのでこのくらいでいいでしょう。私は西区から離れ、薬草を依頼した人の家へと大急ぎで戻りました。