よどみ
「さて」
「はい」
「帰れ」
「往生際が悪いにも程がある!!」
私の悲痛な叫びに外から圧がかかる
「ねぇ」
「あ、大丈夫です。ちゃんと教えます」
先生は薫さんからの圧から逃れるとふうと大きく息を吐き額をぬぐった
「先生、そんなに薫さんが怖いならどうして女遊びしまくるんですか?」
「こればっかりは性なんだ」
そういった後に先生は碁盤を出してきた
「しゃあねえから一回打ってやるよ。一応言っとくけど俺の一局の値段は凄いぞ」
「や、本当にもう出世払いで」
打ち始めて1時間
「や、まあ4年やってなかったにしてもゴミだし、どっちにしろゴミだし。普通に誉めるところ無いし、出世の見込みも無いし、とりあえず俺の一時間返してくれない?」
「ほんと返す言葉もないっす」
私は額が床にのめり込まんばかりに頭を下げる。酷いもん!!私の手!まあ、全部ひどい!!
これはぶん殴られると思ったその時、私の頭上から思いもよらなかった言葉が投げ掛けられた
「で、分からなかったところあるか?」
「え!?」
「なんだよ」
「いや、1マッチ覚悟だったんで」
「勘違いするなよバカ」
あ、これ既にバカを私に対する固有名詞として固定してやがる
「オレは救い用のないバカには優しくなれるんだ。だってかわいそうだろ?」
私を見て鼻で笑いながら先生はそういった。なんて嫌な性格だコイツな
「で、どうなんだ。」
「分からないところがわからないです」
「死ねば良いのに。並べ直すぞ」
「はい」
ぱちっ「そこ違うだろ。後のこと考えてるのか低脳」ぱちっ「小三でもお前よりよっぽどマトモな手を打ってくるぞボケナス」ぱちっ「脳が萎縮しきったじじいかてめえは」ぱちっ「何? お前の脳と腕は全く別の司令塔に指示受けてんの? 脳みそで考えてたらそんな手でねえだろ。勘弁してくれよ」ぱちっ「マジかお前」
「そろそろ心折れますよ!!」
「いや、もう本当に折れてくれ。こっから3ヶ月でお前を元に戻さなくちゃいけないこっちの身にもなってくれ」
先生は気分悪そうに手で顔を覆った。いや、そんなにか?
「先生」
「んだよ」
「そんなにヤバいっすか?」
「四年前のお前が今のお前見たらぶちギレるレベルでヤバい。」
たしかにそんな気はする。けどさ
「もうちょい、こう優しくとかね」
この一言が地雷だった。言わなきゃよかった
「は? 何? お前バカなの? 優しさとかでお前食っていこうと思ってるの? 食っていけると思ってるの? まだ、そういうのいる?? もう四年間もその期間経てまだいる? バカなの? あと3ヶ月でプロ試験受けるのにゴミカス実力のお前がそんなものにパート割いてる余裕あるの? バカなの? 頼むからバカも休み休みに言ってくれよ。 え? バカなの? いや、いいよ? 物語なら。そういうのだって必要じゃん。逃げ出したお前を追いかけてな。帰るぞ的なね。 何?お前どの世界で生きてるの? そんなに物語が良いなら面寄越せよ。貞子よろしく、ちょっとそこのディスプレイに顔埋めてやるよ。」
「返す言葉もない!!」
人類にはこんなに淀みなく暴言を繰り出すことが出来るのかとちょっと感動すらしてしまった。