ターン
「先生、失礼します 」
返事はない。私は覚悟を決めて襖を開いた
「誰が開けて良いって言ったボケナスこらぁあああああああああああああああああ!!!」
目の前に飛んでくる金づち。すんでで避ける
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ!!!!!!!!!!!殺人未遂!!!!!!!!!!」
「殺してやる!!」
「先生待って!!先生お願い!!!」
「誰がてめえの先生だ!!」
「ぶちギレですやん!!」
さっきの話で少しほだされそうになったが先生は先生じゃねえか!!
「あんだ? 話を聞けってか? 良いよ? 時間やるよ10.9.8.7.6.5...」
「はやい!! 」
「先生もう一回私をつよくしてください!!」
「嫌です!!」
「バカ先生!!待って!! バカ!! マッチはやめろおおおおおおおおおおお!!!」
閑話休題
「なんでだ?」
「はい?」
「なんでお前帰ってきやがった?」
先生は私にそっぽ向き外の風景を見ながら、畳の上に置かれた背の低い机に肘を置いて聞いてきた。私が良く見たことのある姿だった。
「・・・・私も最初は意地だったんです。あいつにギャフンと言わせてやりたいって」
その姿につられてか、私の口から理由がスラスラと出てきた
「でも、打ってると色々思い出すんです。そう言えばここでこう打てば良かったんだ。とか最善手を落としたとか。で、それだけじゃなくてスポットライトを浴びていた。主人公だった時の自分の夢まで思い出したんですよ」
「私はスポットライトを浴びていたけど、そこから逃げ出した人間です。けど、外れたからと言って死んだわけでは無かったわけで、その外側でずっと生きていたんですよね」
「そこに戻りたいと思ったんですよ。プロになりたいって。それをするために焼けて焦げた手を伸ばしたいって」
「だから私は戻ってきました」
「随分とまあポエマーだな」
「やめてくださいよ。死ぬほど恥ずかしい」
私は改めて先生に向かった
「だから先生私をもう一度強くしてください」
「嫌です」
ひょいっと持ち上げられてポイっと投げられピシャッとドアを閉められた
「いや、嘘やん!!」
普通あそこは、『オレは厳しいぞ』って言う先生に『知ってます』ってニヒルに私が笑う洒落乙な流れやん!!
「先生頼むからお願いします!! いや!マジで!!」
「・・・・・・」
「とりあえず無視はやめて!!」
わーぎゃー騒ぎ立てる私を完全に無視する先生万策尽きたか・・・・
「彩葉ちゃんちょっとどいて?」
後ろから薫さんが私を呼んだ。謎の圧に押されて私はその場を退く。薫さんは扉の前に立ったそして
「ポニーテール限定女の子おにゃんこ倶楽部!!」
「お前なんでそれを!!!!!」
ガラガラガラと勢い良く開いた扉の奥には憔悴しきった先生がいた
「随分と楽しそうな事してるわね」
彼女は帯の中から名刺を取り出して口元に持っていく。すげえ顔だ。
「いや、それは付き合いで!!」
「へぇ、八木さんがゲロったけど」
「あんのバカ野郎」
「で? 嘘までついたと」
「いや、それはね? 違うんだよ」
さっきまでとはうって変わって焦りに焦った先生は必死に嘘を重ねようとした。それを見た薫さんは大きくため息をついて続けた。
「まあ、いいでしょう。」
「ほんとうか!?」
「その代わり彩葉ちゃんにちゃんと教えなさい」
「教える教える!!」
「じゃあ騒がないでね」
「はい」
ずっと薫さんのターンだ