反対
「で、その先生は?」
「武蔵野あたりに住んでるんだよねー。けどさ」
「けど?」
「行ったら絶対殺されるじゃん?」
「そんな朗らかな顔で言う台詞じゃないよ」
「かしはらぁ、彩葉が別次元生きてるよぉ」
私の言葉に二人は怯える。この言葉は、中2臭い「殺すよ?笑」みたいな感じじゃない、行かなくなった時も逃げるようにやめた。そして先生の性格だろう、その後連絡は全然なかった。けど、私には分かる、あの人ぶちギレてる。4年たった今でも軽く顔を出せばイかれる。
「けど、暴言だけでしょ?そんな暴力は無かったでしょ?」
「うーん、暴力自体はそんな無かったな。殴るとか蹴るとかさけどカチカチ山事件ってのがあってさ」
「「カチカチ山?」」
二人が声を揃えて聞いてくる。まあ、この言葉じゃ分かるわけないか。私は懇切丁寧に解説を始めた。
「知ってる?おとぎ話なんだけど」
「あの、原作結構グロいのだよね」
「たぬきの背中に火焚かれて燃えるやつだ!」
「そうそう、それ」
私は、おーよしよしと生駒を撫でながら返答する
「私がさ、夜通しで先生と囲碁の研究してるときに眠くなったのね。」
「うん」
「で、うとうとすんじゃん」
「うん」
「するとね、意識の外から歌が聞こえてくるの」
「ほう」
「『かっちかっちやまのたぬきさん』って」
「・・・・・」
「嫌な予感がしたよね。目を急いであけるじゃん」
「・・・・・・・・・・・」
「火のついたマッチが目の前に飛んできてた」
「「やべえ!!!!!」」
「しかも、それ先生の家のソファ。いやーあの時ばかりはマジで死んだと思った」
「殺人未遂じゃないそれ?」
「そういう側面も無くは無い。」
「で、彩葉その先生にもう一回教わるの? やめときなよ私は反対だよ」
「私もそんなによろしくないかなーと」
二人は私を心配してるのだろう、言葉は選びながらも、要するにそんなろくでもない人間の元に戻るなと言ってくる。けどそんなこと
「・・・・るさい」
今の私にとっては大きなお世話だった
つい、転がり出た言葉に回りが凍りつく
「は?あんた何て?」
「いろはーやめてよ喧嘩はやだよ」
「うるさい」
けど、私はその言葉を撤回することはなかった
「あんたね!!」
「私だって反対じゃボケぇ!!誰が好き好んで奴の元に戻るか!!嫌やわ!!絶対戻りたくないわ!!あいつのせいでどれだけ性格歪んだか!! あいつに結構門下生いたけど奴のせいで全員が全員『みんなで、強くなろう!!』って精神から『いや、あいつらどうでもいから自分だけが強くなりたい、出来ることなら他は全員死んでくれ』位のメンタルになるんだぞ!!そんなところに誰がもどるか!!!」
「あ、そっちなんだ」
「いや、そっちか」
でもさ
「でもさ、強くなるにはどうしてもしなくちゃいけないことがあるんだ」
私は呟いた。そう、私は強くならなくちゃいけない。だから
「だからありがとう。二人とも。でも私、ちょっと行ってくるよ」