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天を打つ  作者: ああああああああああ
21/28

色々


「で?」

「で?とは?」


 大久保さんが質問に質問で返してくる。さすがに主語が足りなさすぎた気がしないでもない。


「最近どうよ? 大久保さんも今年受けるの?」

「え?」


 今度はちゃんと伝わるように話したが、それでも大久保さんが私を見ながらすっとんきょうな声を上げる


「は?」

「いや、びっくりした。お前俺に少しの興味もあったんだな」

「大久保さんは私をなんやと思ってるのか」


 すると大久保さんはこちらを憎いものを見るたっぷりと憎悪を孕んだ目で


「うんこ」


「だめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめさすがに目はだめ!!!」


「で?」

 

「ぜーはーぜーはークソバカ力め。」

「で?」

「俺もう本当にお前が怖い。」


 軽く息を整えながら彼は私の質問に答えてくれる


「まあ、俺は今年ダメだったら諦めるつもりだよ」

「え!そうなん?」


 大久保さんの言葉に私は驚く。


「うん、最初はそんなつもり無かったけど。いろいろあってね」

「なるほどね。色々か。」


 棋士を目指すものにとって、日常生活とプロを目指す自分とのバランスの兼ね合いはとても、とてつもなく大きな課題になる。プロ棋士を目指す。言うのは簡単だが、それを目標とするために捨てるものは非常に大きい。特に十代の思春期を過ごす者は、人並みの遊びや付き合い、そして恋愛などを犠牲にする現実は決して珍しいことではないのだ。したがって、それを捨てきれなくて棋士を諦める人もまた決して少なくない。

 きっと大久保さんも色々な事が積み重なって出た『色々』なんだろう


「ね、大久保さん」


 意図して私は話題を変えた


「なに?」

「あそこには良く行くの?」

「あぁ、碁会所?うん行くよ」

「なるほど」


 私はなるほどなるほどと何回か反復した


「お前、良いカモが見つかったって思ってるだろ」

「んなわけ(笑)」

「一応いっとくけどあそこでかち合わせても俺お前とは指さないよ」

「なして!?」


私はまたも驚いた


「お前な、プロ試験戦うことになるかも知れないやつにわざわざ手の内明かすわけないだろう」

「けど!それは私も」

「一緒じゃないよ? 一ついっとくけど」

「?」

「今のお前はすこぶる弱い!」


 こいつ言いやがった!!


「だから、お前とやって勉強になることは一つもない!!」

「うっ!!」

「4年出直してこい」

「うっ!!!!」


 言ってやったと言わんばかりの大久保さん

 反論したくても出来ない私


「そう言わないでよ」


 私は自分の美を120%に増量し、ねだる


「はっ!おめえのその顔には騙されないぞ」

「わ、私の顔が効かない!?」


 自分の顔に効力を持たないことに驚きを隠すことが出来ない


「大久保さんもしかしてホ・・・」

「違うよバカ。お前本当そういうところよ?」

「えー、本当に大久保さんうってくれないの? 頼むよー、もう本当に大久保さん位しか頼りは無いんだよー! お願いします。」


 私の頼みが本当にうざかったのか大久保さんは耳に栓をしながら


「・・・・はぁ、分かった。」

「まじっすか!?」

「あそこで会うたびに一局ずつは指してやる。」

「マジで!?バリえぐいやん!!」

「ただ!!ひとつ条件がある!!」

「ん?」

「打ち初めて俺が時間の無駄って認識したらすぐにやめる。それが条件」

「もちろん!!」


しゃっあ!!大好き私の顔!!


「その間違った認識やめろ。お前が美人なのは認めるが俺の琴線には一切触れない」

「あー大久保さん、まだ桜ちゃんのこと好きなの?」


 しばし静寂


「は、はああああああああああああああああ!?!?!」

「いや、大久保さん顔真っ赤にしてますやん?」 

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