諦め
「お母様」
「なんでっしゃろ」
私は夕食時重々しい空気を持ち出しながら喋りだした。
「私ちょっともう一回囲碁やってみようと思うねんけど」
私の考えはこうだ。
今私は高校二年生、この時期からこんな事を言いたくないがそろそろ大学だって考えなければいけない時期になってきている。
そんな時に自分の娘がもう一回囲碁を始めたいなんていうこと親が許すだろうか。親が許さなければ私はなくなく諦めた事に出来る。そこそこ最低「ええんちゃう?」な作戦なのだ。
・・・・・・・ん?
私はさっきの独白の中で母が言った良く分からない言葉を探す。
「え?」
「いや、別にええんちゃう?」
「ええのですか?」
「ええのですよ」
「受験とか」
「あんた成績が優秀なんやから大学とか最悪推薦あるやろ」
優等生である弊害がこんなところに!!!!
と、同時に家族の同意を得られた喜びを感じてしまう私は本当にダメな人間なんだろう。
「で、どうすんの?こっちで先生探すんか?」
「いや、しばらく日本棋院で対局して対局勘を取り戻したい。」
「ええんちゃう?しらんけど」
知らんけどなんて便利な言葉
私は自室に戻りしばらく悩んでからタンスを開け奥まで頭を突っ込む
あった
そのまま手を伸ばし木箱を取り出した。そして足のついた盤、本、ファイルを部屋に出していく。
盤の上においていた布を外し、柔らかいタオルで乾拭きする。
「・・・・ごめん」
自然と口から言葉が出た。
「ごめん、ごめん、ごめん、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめん、ごめんなさい」
自分が感じてはいけない、感じることが許されない木の温もりを感じて死にたくなってくる。
そのまま白石を洗剤に入れた水で洗い、黒石を買ってきたベビーオイルで丁寧に手入れする。
ほこりを被っていた本のほこりを取り除いた。
盤の前に座って
私は諦めることを諦めた。