頭から消えた 7
「こんにちは。見崎署から伺いました。生野と申します」
男を大きな声が起こす。
眠い目を必死に開けながら玄関に向かった。
扉を開けるとそこにはまだ齢30程の男性が立っていた。
「何か御用で」
男が訊ねる。
「改めて、見崎署から伺いました生野と申します」
警察手帳を見せて生野と名乗った男が言う。
警察が何の用なのか。
男は何か嫌な予感がした。
「この度捜査のお手伝いをするため派遣されまして」
男は正直落胆した。
ただでさえ精神がどうにかなりそうなのに、警察と一緒に捜査なんて考えただけでもしんどい。
「あの。自分だけでも大丈夫なので」
そう言って扉を閉めようとした男を生野が制止する。
「駄目ですよ。こちらとしても手持無沙汰じゃ帰れないんです」
そちらの都合など知ったことか。
男はイラついた様子で言う。
「とにかく今は疲れているので。また後日来てください」
本心は2度と来るなと思っているが。
「では、こういうのはどうでしょう。あなた様はお休みいただいて、その間に私が捜査します」
全くもって論外だ。
「そうだ。あなた様と呼ぶのも失礼ですよね。この家の表札に中川と書いてありました。これからは中川さんとお呼びしても宜しいですか」
中川。それが自分の名前なのか。