頭から消えた 4
埃がかかり煤けたソファー、その前にはガラスの机がある。
ここに何か自分を知る手掛かりは無いか。
男が必死に探し回る。
しかし、あるのは何の変哲もない物ばかりである。
男が深く溜息を吐きドタッと倒れるように座り込む。
「何なんだよ」
震えた声で嘆く。
警察に届ければ何かが見付かるだろう。
それが一番手っ取り早い。
だが、男は自らで自分のことを知りたいのだ。
自分がどんな人間だったのかも不安がある。
もしかしたら相当な悪人だったのではないか。
本当は知らない方が良い場合もある。
だが、男にとって今のまま過ごすことは地獄にもあたる程苦痛だった。
男がフラつきながらも立ち上がる。
涙を腕で拭いながら部屋を出た。
廊下を奥へと進んで行く。
すると目前と右側に扉が現れた。
男は少し悩んだが、右側の扉を選んだ。
扉を開けるとそこはダイニングキッチンだった。
テーブルの上には料理が並べられている。
よく見るとどの料理も腐ってハエが集っていた。
男は気分が悪くなりシンクに吐いた。
吐いて気分が少し楽になったのか、男が探索を再開する。
料理が出されたままの状態。しかも、相当な時間置かれていたのが分かる。
これは何を意味しているのか。
一体何が起こったのか。男を不安という名の魔物が押し潰す。