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俺・プリンセス  作者: 風鈴P
第9章 日常生活編
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第88話 とうぞくとうばちゅ(2)

「でね、とりあえず貰った情報だとこの辺りで被害が起きてるらしいから…」

「なるほど。それだとこの山道が怪しいね。」

アルフレッドと俺は地図を広げながら方針を話し合っていた。



「・・・」

そんな俺達を背後から睨み付ける視線がひとつ。



「ねぇ、僕達見られて無い?」

「う、うん。」

俺は後ろを振り向いた。

「ど、どうしたのかな? アレクサンドル君。」

アレクサンドルはじとっとした視線を送ってきていた。


俺にというよりは、横にいるアルフレッドに向けたもののようだ。

「いえ、何でもありませんよ。先生。」

アレクサンドルはあからさまに不機嫌そうな顔で答えた。


「…僕、この人に嫌われてるのかな?」

アルフレッドが耳打ちしてきた。

「さ、さぁ…」

俺はそう答えながら苦笑した。



昨日今回の盗賊討伐の任務を説明するためにアレクサンドル達を招集した時、彼はやる気に満ちた顔をしていた。

しかし説明の前にアルフレッドを呼び紹介したあたりから不機嫌な顔になっていった。

んー。とりあえず俺からはこれ以上触れないようにしよう。



「さ、さて。今回の作戦の趣旨を説明します。今私達がいるのがここ。被害が多発しているのがここ。ナイザール王国からの境界からは山道が通っているので、犯人はここを通過しているものだと考えられます。」

俺は説明を開始した。

「犯人達は私の兄であるレオポルド派に属する、または属していた兵である可能性があります。皆さんは私が教えていた生徒達の中で上位の実力を持っていると考えています。貴方達であれば相手が兵士であっても遅れを取ることは無いかと思いますが、皆さんはまだ実戦経験がありません。ですが敵は貴方達を殺すつもりで戦ってくるでしょう。」

対人の戦いに出る前、俺もケヴィンなどから言われた言葉だ。

殺意を持って掛かってくる敵に躊躇していたら、自分だけでは無く仲間の命を危険に晒しかねない。

「敵を捕縛できればそれにこしたことはありません。ですが今回私達は全部で7名しかいませんから、自分と仲間の命を守ることを最優先にしてください。」

本当はもっと人数を掛けられれば楽ではあるのだが、実戦経験の無い生徒を多く引く連れても何かあった時に守り切れるものではない。



「じゃあ僕、ちょっとこの先の偵察をしてくるよ。何かあったら念話の呪文書(スクロール)で。」

アルフレッドが口を開いた。

「そう? でも一人で行くのは危ないね。俺が一緒に…」

俺はアルフレッドの方を向いた。

「アスカ、君はここで待っててよ。護衛はそうだな、アレクサンドル君にお願いしようかな。」

「え、私ですか?」

突然の指名に、アレクサンドルがびっくりしたような顔になった。

「生徒の中でトップの実力だと聞いたんだけど、僕の護衛をするのは自信ないのかな?」

「むむ。そんなことはありません。良いでしょう、私が行きます。」

アレクサンドルがむっとした表情で立ち上がった。

「宜しく。じゃあ、アスカ。ちょっと行ってくるからね。」

「うん、分かった。気を付けてね。」

だ、大丈夫かな?

実力的には問題ないとは思うけど…。

まぁ、アルフレッドがいれば心配ないとは思うが。

俺は二人の背中を見送りながらそう考えた。




「中々狭い山道だね。結構急峻だし、大人数の兵は来そうにないから、敵は少人数で行動してるんだろうね。」

アルフレッドが周囲を見渡しながら言った。

「そうですね。」

アレクサンドルは依然不機嫌なままだ。

「…君は僕が嫌いみたいだね。昨日初めて会ったばかりの人間を嫌いになるなんて、いったいどうしてなんだい?」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「…やれやれだね。」

アルフレッドは肩をすくめた。

「思うに、君は僕がアスカと仲良くしてるのが気に入らないのかな?」

「・・・」

アレクサンドルの表情が少し変化した。

「やっぱりね。君はアスカに対してどういう想いを抱いているかを聞くつもりは無いよ。まぁ、想像は出来るけどね。でも僕とアスカは、まぁ…それなりに仲間以上の関係でいると思ってるよ。」

「やはりそう…ですか。」

アレクサンドルは表情を曇らせた。

貴族のお坊ちゃまはそういう経験はきっと少ないだろう。

「アルフレッドさん、私はマルゴワールでは身分の高い貴族の家に生まれました。先生は、姫様は王族で最初こそ身分を誇示されることをおっしゃいましたが、それは先生よりも実力も無い癖に横柄な態度を取った私を戒めるためになさったのでしょう。」

アレクサンドルが空を見た。

「ですがそれ以降は身分など関係なく接して頂きました。先生は私達のような貴族でない人に対しても、きっと同じなのでしょうね。」

「そうだね。身分の話で言ったら、僕なんかアスカの従者で、出自は奴隷さ。君に対してこんな口調で話してるのも無礼極まりない事だよ。」

「はい…」

「でも僕は君の事を見下してるわけじゃないから、それだけは理解してほしいかな。ん…?」

アルフレッドは何かの気配を察し、右手でアレクサンドルを制した。

「向こうから何人か来てるみたいだ。魔力も感じるから、魔術師もいそうだな。そう多くは無いようだが…。よし、森に入って身を隠そう。」

「は、はい…!」

「気配を気取られない様に身を隠して。…向こうは3名か。」

二人は身を潜め、息をひそめた。



「さて、どうするかな…」

アルフレッドは双眼鏡を覗き込みながら呟いた。



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