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俺・プリンセス  作者: 風鈴P
第1章 目覚め~王宮生活編~
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第9話 魔法が使えない!?

「そ、それはどういうことですか?」

俺はすがるような目でブレーズを見た。

ひ弱な(アルエット)にとって戦う力を得られるとしたら、魔法しかなかったからだ。

「今、魔素解析で姫様のお体、魔力の状態を見させて頂きました。その結果、姫様は呪いを受けられている事が分かりました。」

「呪い…?」

「はい。呪文詠唱に魔力を乗せられない、という呪いです。」

ブレーズが俺を見た。

「同じようなものに、魔導士を沈黙状態にさせるという状態異常魔法があります。その効力は一時的なものです。ですが」

ブレーズが呼吸を置いた。

「姫様に掛けられているものはその比ではない、呪いクラスの魔法でしょう。」

「そ、それは治す方法はあるの…?」

「姫様に掛けられている呪いについて詳しく解析出来、その構成が分かれば解けるかも知れません。ですが私の実力では到底及ばない、そんなレベルのもののようです。」

ブレーズが表情を暗くした。

「そんな…」

俺は俯いた。俺は高校受験に失敗した時と同じような感覚に襲われた。

「お、俺は、またスタートラインにすら立てないの…?」

俺は頭を抱えた。そして目の前の魔導書を払いのけた。

魔導書はブレーズの前に落ちた。

ブレーズは落ちた本を拾って、俺の手が届かない場所に置いた。

「ご、ごめんなさい、先生。本、乱暴にしちゃった。」

俺は引きつった笑顔でブレーズを見た。頬を涙が流れるのを感じた。

「…良いのですよ、姫様。呪いについては私の方で解決策が無いか探ってみます。時間を掛ければ何とかなるかもしれない。」

ブレーズは俺の頭を優しく撫でた。

「今日はお休みになるのが良いでしょう。あまり暗い顔をされると、アルフレッド君も悲しみますよ。」

「そうですね…、ありがとうございます。」

俺は(アルエット)の実父であるヘンドリクセン王の事はよく知らない。

俺の感覚では、ブレーズ先生が父親のように感じた。




書庫を後にし、俺は庭が見えるバルコニーにやってきた。

城壁の向こうには夕日が見え、とても綺麗だ。

俺は力が欲しかった。でもそれは叶わない。

そう考えると、沈みゆく夕日は綺麗に見えなくなってしまう。

…その時、庭の方から何人かの声が聞こえて来た。

「アルフレッドだ、眠り姫の従者が来たぞ!」

3人ほどの男が囃し立てるような声を出している。

その先にはアルフレッドがいた。

「おい、何か言ったらどうなんだ?」

「奴隷のくせに、俺達貴族と同じ場所にいるんじゃねえよ!」

一人がアルフレッドの胸倉を掴んだ。

「…おやめください。マリユス様」

アルフレッドが苦しそうに言った。

「こいつ確か奴隷のくせに、王族と揃いのネックレスしてるんだってな。」

「引きちぎっちまえ!」

もう一人がネックレスに手を掛けようとした。

「お、お願いです。やめてください!」

アルフレッドはその場にうずくまり、ネックレスを守るように背中を丸くした。

「なんだ!この…!」

男達はそんなアルフレッドに殴る蹴るの暴行を加え始めた。

だが、アルフレッドは抵抗をしない。

俺はその光景を見て、わなわなと体を震わせた。

アルフレッドは魔法を使うことが出来る。でも、何で抵抗しないんだ…!

俺は我慢できず声を張り上げた。

「お前たち!何をしているんだ!」

俺は近くにあった花瓶を投げつけた。

でもやつらの所には届かない。俺は無力だ。

「いけね、アルエット様がいるぞ…」

「ここは逃げようぜ。」

「アルフレッド、運が良かったな。」

男達は暴行をやめ、逃げていった。

俺はそれを見届けると階段を下り、アルフレッドの所に駆け付けた。

「アルフレッド!」

俺はアルフレッドの傍らにしゃがみこんだ。

「姫様…、なんでこんなところに? ブレーズ先生の授業を受けられているのでは無かったのですか?」

アルフレッドは一度俺を見てから、視線を落とした。

アルフレッドの顔には痣が出来、口の中も切れているようだ。

服の下にもきっと痣が出来ているだろう。

「俺の事なんてどうでもいいんだ。アルフレッド、何であなたは抵抗しなかったの? こんなに痣だらけになって…」

俺はアルフレッドの肩に触れた。

「・・・」

アルフレッドは答えない。

「あなたはあんなに強い魔法を使える! あんなやつら、蹴散らすくらい簡単じゃない!」

「・・・」

「ねぇ! どうして!」

俺は目に涙をいっぱい溜めた。

「…僕の魔法の力は姫様を守るためにあります。僕自身の為にあるのではありません。」

アルフレッドが視線を合わせずに言った。

「な…」

俺は言葉を失った。そして俺はアルフレッドの頬をぺちんをはたいた。

「馬鹿! アルフレッドの馬鹿!」

アルフレッドがビックリしたような表情で俺を見た。

「俺だって力があったらあなたを守りたい。でも…、それは出来ないんだ。自分の為にある為じゃないって? あなたが大けがでもしたら、俺はどうすればいいんだよ!」

無茶苦茶だ。自分でも何を言ってるか良く分からない。

でも怒るしかなかった。

「いくら俺と揃いのだからって、そんなネックレス守るくらいなら、自分を守ってよ!」

俺はアルフレッドのネックレスを引っ張った。

俺の力では引きちぎれるものではない。俺は本当に無力だ。

「…分かりました。申し訳ありません。姫様」

アルフレッドはネックレスを引っ張っている俺の手に触れた。

俺はネックレスから手を放した。

「ブレーズ先生に治癒魔法掛けてもらおう? ね?」

俺はアルフレッドの手を引いて立ち上がった。

「分かりました。」

アルフレッドは痛みに顔をしかめながら立ち上がった。



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