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俺・プリンセス  作者: 風鈴P
第8章 反攻編
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第80話 救出作戦(4)

その後ヘンドリクセン王救出作戦は概ね順調に進んだ。

俺達は城を脱出し、再び隊商(キャラバン)に偽装しバルデレミー商会の船が停泊している港に向かった。

何故容易に城を脱出出来たか? であるが、ケヴィンが非常に貴重な広範囲催眠魔法の呪文書(スクロール)をしようしたそうだ。

実に準備が良い。

まぁ資金はギュスターヴから出ているからケヴィンの懐が寂しくなるということは無いだろうが、そんなに多く流通しているものでもないらしい。

夜までに俺達は港に到着し、俺達は船での待機を命じられた。

父王はバルデレミーの屋敷に兄の部下によって搬送されたようである。

未だ意識は戻っていないとのことだ。

面会謝絶である。

心配ではあるが、(アスカ)は父王との関りが無いからそれ以上の感情は湧いてこなかった。

さてここからは後で話に聞いたマルゴワール領での顛末を話そうと思う。





父王が救出され港まで搬送された翌日、バルデレミーはマルゴワール伯爵ジョルジュを自身の屋敷を招いていた。

世界を股にかけて商業活動を行うバルデレミーは各地に屋敷を構えていた。(それはもちろん商会の事務所を兼ねているのであるが。)

「これはジョルジュ伯爵様、ようこそ我が屋敷にいらっしゃいました。」

バルデレミーは満面の笑みで出迎えた。

「うむ、邪魔するぞ。」

ジョルジュは僅かな従者を連れているのみであるが、その表情に緊張感は無かった。

「伯爵様、我が屋敷は安全でございます。おもてなしの品なども用意しております故、御付きの方々は控室にご案内して宜しいですかな?」

「ん、ああ。そうだな。」

「勿論、御付きの方々へのお食事もご用意しております。」

「分かった。お前達、案内して貰うが良い。」

「はっ!」

ジョルジュの従者達は執事に別室へ案内されていった。

「伯爵様、こちらでございます。」

バルデレミーはジョルジュを一番豪華な部屋に招き入れた。

室内では既に豪華な料理が用意されていた。

ジョルジュは笑みを浮かべ上座席に座った。

「これはまた豪勢だな。バルデレミー、何か良いことでもあったのかね?」

バルデレミーは時折土地の有力者を接待することがあった。

それはバルデレミーが自らの商売を円滑に行う為だ。

当然ジョルジュもそれを受けた事があるわけだが、今回はいつもより豪華な食事が用意されていたのだ。

「はっ…。実は独自に進めていた計画が成功裏に事が運びましてね。」

「ふむ、なるほど。」

ジョルジュは目の前のワインを口にした。

「それは私に話せるような内容なのかな?」

「そうですね、お耳に入れておいた方が良いでしょう。」

バルデレミーがパンと手を叩いた。

すると執事が前に出て来た。

「お呼びで…?」

「あの方々をお連れしなさい。」

「畏まりました。」

執事が一礼して部屋を出ていった。

「誰かを私に会わせようと言うのか?」

「はっ…。伯爵様にはお引き合わせした方が宜しいでしょう。」

数分後、扉が開いた。

入って来た人物を見るや否や、ジョルジュがガタっと立ち上がった。

「な…! あ、義兄上(あにうえ)!」

入って来たのはケヴィンだった。

「久しぶりだな、ジョルジュ。お前は内政には長けているようだが、駆け引きというか、実力行使の方はまだまだだな。」

そしてもう一人は…。

「あ、貴方様は…、ギュスターヴ殿下!」

第一王子ギュスターヴだ。

その姿を見て、ジョルジュは慌てて跪いた。

「・・・」

ギュスターヴが悠然と部屋の奥へ進んでいった。

「こ、これは一体どういうことなのだ…?」

ジョルジュは跪きながら部屋の隅に控えていたバルデレミーに問う。

「ご覧の通りですよ、伯爵様。我々はギュスターヴ殿下の指揮の下、ヘンドリクセン国王陛下をお救いしたのです。」

「な、何だと…?」

「お前がバルデレミーとの会合に気を取られている内にな…。まぁ用心にもマルゴワール随一の将を配置はしていた様だが。」

ケヴィンが口を挟んだ。

義兄上(あにうえ)の能力か…。」

「そう言う事だ。」

ジョルジュはケヴィンの変装魔法は知っている。

だがまさかバルデレミーと結託しているとは思わなかったのだ。

しかも、第一王子ギュスターヴが行動を共にしていたことも。

「マルゴワール伯ジョルジュよ。」

ギュスターヴが口を開いた。

「は、は…!」

ジョルジュがうろたえながら答えた。

「貴様が弟を脅威に感じ、王をやむなく幽閉したのは知っている。父は拘束されることも無く、それなりの待遇だった。そこは大儀な事であったな。」

「・・・」

ジョルジュは顔も上げられないでいた。

『大儀であったな』とは実に皮肉な言葉だ。

「さて、俺はお前の忠義がどこに向いているのかが知りたい。答えよ。」

「わ、私の忠義はナ、ナイザール王家に向いております。我が家系は初代より王家にお仕えしている家系にて…」

ジョルジュは何とか声を絞り出した。

「然り。我々は先程の通り、王を救出した。残念ながら、今我が王都にいるのは不埒な弟である。王を蔑ろにし、周辺諸国を征しようとしているのは周知の通りであろう。」

「は…!」

「ジョルジュよ。貴様の領内にもその不埒者の手勢がいる様だな。…まずは貴様の忠義を見せて貰わねばなるまいな?」

つまりギュスターヴはジョルジュに対して、第二王子レオパルドの軍勢を駆逐せよと言っているのだ。

そしてこの地は王都近傍へ兵を送り込む拠点となるだろう。

「良いな? ジョルジュ。」

「…命に変えましても。」

ジョルジュは立ち上がり一礼し部屋を出た。

逆らえる訳がない。

ジョルジュは動乱当初にギュスターヴに屈した。

その要因は圧倒的軍事力の差だった。

だが今回のそれはギュスターヴへの畏怖である。

ジョルジュはかつてより、ギュスターヴと面識があったのは勿論のことである。

今まではここまでの畏怖など感じたことが無かった。

だが先程まで目の前にいたギュスターヴは…。

ジョルジュは首を振った。

「考えるだけ無駄…だな。」

マルゴワール伯爵家。

家格は高いが、強力な力を持っているわけでもない。

義兄(ケヴィン)の言った通り、駆け引きに長けている訳でもない。

だがジョルジュは自らの家を守るという使命感は強く持っている男なのだ。

「城に兵を集めよ。出陣する。」

ジョルジュは部下に指示を出し、装備を整えるために城へ向かった。




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