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俺・プリンセス  作者: 風鈴P
第7章 商船護衛編
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第70話 迎撃

カンカンカン!

「海賊だー、海賊が来たぞー!」

警報の鐘と共に当番であるイアサントパーティの見張りの声が聞こえる。

海賊の出現。

それは黒の大陸・ノワールコンティナンからエレオノール大陸に近い海域に到達した証拠である。

海の荒くれ者の海賊も、魔物が現れる海域で暴れる奴なんていない。

俺達のパーティは装備を整え、甲板に向かった。

…そういえば俺って本格的な対人戦闘は初めてかもしれない。

「おう、アスカも来たのか。」

甲板に出るとフェルディナンに話し掛けられた。

「あ、うん。海賊ってあれだね。」

視線の先には大きい船が見えた。

海賊船からは弓矢による攻撃が始まり、船首の方では既に応戦が始まっているようだ。

「向こうに見えるのは奴らの別動隊の船だな。思ったより規模の大きい連中らしい。」

フェルディナンが指さした方向にもやや小ぶりであるが船が接近しつつあるのが見えた。

「しかしアスカ、お前大丈夫なのか…?」

「え、何が…?」

俺はフェルディナンを見上げた。

「お前に人が斬れるのかってことだ。」

「ん…」

フェルディナンの問いに言葉が詰まってしまった。

俺は魔物が相手の戦闘なら経験を積んできた。

稽古としての対人戦闘ならしたことがあるが、所謂殺し合いをしたことがない。

だが海賊達は俺達を殺すつもりで襲撃してくるだろう。

俺は彼らを斬れるのだろうか。

「俺は過去の仕事で人を殺ったことがある。俺のスキルで出来るのは毒殺だがね。」

「・・・」

「人を殺す覚悟がないなら、今日の所は引っ込んでるんだな。」

フェルディナンは俺の肩を叩くと、戦闘加わるべく走っていった。




「アスカ、ボク達どうするの?」

カールが後ろから話しかけてきた。

「あ、ああ…」

俺は戦況を見つめた。

俺達が乗っている船は2隻の海賊船に挟撃されている形になっている。

戦闘に加わっている者たちはその攻撃を良く防いではいるが、防戦一方という感じだ。

このまま躊躇していれば、味方に被害が及ぶだろう。

「…よし!」

俺は意を決した。

「海賊たちがこの船に乗り移ってきたら厄介だ。あの右舷側に風穴を開ける。」

俺は後ろに控えている仲間達を見た。

「カールは獣化して俺についてきて。アルフレッドとリディは後ろからお願い!」

「分かった。」

俺は態勢を低くし風の魔力を脚部に集中しはじめた。

横ではカールが獣化を開始した。

「グゥゥ…、アスカ、良いよ。」

「よし、行くよ!」

ダンッ!

俺は一気に風の魔力を開放し、敵に向かう。

カールも遅れずについてきている。

「カール、出来れば海賊を殺さないで。」

「グググ?」

それは俺なりの覚悟だ。

俺はかつて魔導砲で何万という命を一瞬にして奪い去ったんだ。

出来るだけ人の死は見たくない。

「でも、アスカが危なかったら、それは出来ないよ。」

「そうならない様に努力する。」

俺達は一気に海賊との距離を詰めた。

「なっ!」

海賊たちは風の様に近づいてきた俺達に躊躇したようだ。

俺は剣を抜いて一気に斬りかかった。

ガス!

勿論みねうちだ。

カールも爪で切り裂いたりすることなく、拳で敵を攻撃していた。

俺達は数人の海賊を気絶させた。

「て、てめえら!」

一瞬戸惑っていた海賊たちが俺達への攻撃しようとした。

ブワァァ!

その瞬間を捉え、後方から炎熱魔法が飛んできた。

そして海賊たちの足を止める様に弓も放たれた。

さすがアルフレッドとリディだ。良くタイミングを分かっている。




「ち、あいつ等意地でも斬らねえつもりかよ!?」

フェルディナンがその様子を見て吐き捨てる様に言った。

「あの子達らしいじゃない?」

「うお、ノエル! お前いつの間に?」

「今日は見てるだけで手伝うつもりは無かったんだけど、あれを見ちゃったらね。」

ノエルはそう言って額に手を当てた。

「お、お前まさか…?」

「グググ…」

ノエルが獣化を始め、そして尻尾が4本ある狐に変化した。

「フェルディナン、麻痺薬はあるか…?」

「あ、ああ。何に使うんだ?」

「私の魔法に混ぜる。」

「混ぜる?」

フェルディナンは怪訝そうな顔で麻痺薬を取り出した。

「私の獣化のスキルは魔法融合だ。基礎となる魔法に他の効果を融合させることが出来る。」

ノエルは右手に炎、左手に水の魔法を出しそれを融合させた。

火なのか水なのか、区別することのできない流動体、そして麻痺薬を袋から取り出すと薬がその流動体に溶け込んでいった。

「向こうはアスカ達で何とかなるだろう。さて私はこっちを片付けるとしようか。」

ノエルが融合させた魔法を右手に術式固定し、海賊に向かって駆け始めた。

その間にはイアサントがいた。

「ノ、ノエル!?」

イアサントがノエルの接近に気付いた。

「イアサント、その戦斧で私を敵の真上まで飛ばしてくれ。」

「何だと?」

「馬鹿力のお前なら出来るだろ?」

「ち、言わせておけば…」

イアサントは愚痴を言いながら戦斧を下に下げた。

「うおおおおお!」

そしてノエルが戦斧の柄と刃の上に乗ったのを確認すると、思いっきり上に振り上げた。

体重の軽いノエルは海賊の上まで飛ばされた。

「術式開放!」

バァァァァァン!

水蒸気爆発の様な音がに響いた。

辺りには爆発によって麻痺効果のある霧が撒き散らされた。

「ぐ・・・う・・・」

海賊たちは次々にその場に倒れていった。




総員の半数以上が戦闘不能になった海賊は引き上て行き、戦いは終結した。

俺達の船は怪我人は多数出たが死者は無く、勝利と言っていい。

最初の襲撃から最前線で戦ったイアサントパーティは重傷者も出たのでしばらくは見張り番には立てないかもしれないが、俺達やフェルディナン・ノエルパーティに目立った被害はない。

戦闘に不参加の元ロベールパーティも含め、まぁ任務の遂行は可能だろう。

「しかし、お前等には呆れたな。敵を斬っちまえばもっと楽できたのによ。」

フェルディナンがあきれ顔で言った。

「ごめん。でも出来る限り、人の命を奪いたくないの。」

「まぁいいさ。でもいつまでもそんな甘い考えが通用すると思うなよ。」

「うん…」

俺はフェルディナンを見送りながら答えた。

ふと視線の向きを変えると、仲間に肩を支えられながらノエルが歩いているのが見えた。

ノエルの獣化は直接戦闘向きではないらしい。

そして「魔法融合」の種類や数によっては獣化を解いた後の疲労度がとてつもないそうだ。

フェルディナンの言う通り、敵を殲滅する作戦ならノエルがあそこまで無理をしなくてもよかったのかもしれない。

ノエルには俺の我儘に付き合わせてしまったな。後でお礼を言っておくか。

俺は弱々しい足取りで歩いていくノエルの後姿を見ながらそう思った。

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