第64話 オオダコ祭り!
カンカンカン!
甲板より異常を知らせる鐘が聞こえた。
今日の見張りはフェルディナンのパーティのはずだ。
「どうする?助けに行くか?」
アルフレッドが言った。
「うん。リディの件もあるしね。」
俺が答えた。
リディの件というのを説明すると…
先日、あの後俺はフェルディナンの所を訪れた。
「失礼しまーす。」
俺は扉を開け中に入った。
「何だ? 何の用だ?」
フェルディナンが怪訝そうな顔で言った。
「いえ、先程のお礼を言おうと思いまして。」
「礼だと…?」
「はい。もしあの時貴方が教えてくれなかったら、私はあのままリディに飲ませてました。ありがとうございました。」
俺はペコッと頭を下げた。
「よ、よしてくれ。ガラじゃねえからさ。」
うん、この感じ典型的な奴だ!
「それで、もうひとつお願いがあるのですが…」
「お願い? 何だ?」
「うちのリディ、横にさせてたら少し良くなったみたいですけど、まだ気分悪そうなんです。それでその、出来れば酔い止めになりそうなお薬持っていませんか?」
「ふむ…」
フェルディナンが腕を組んだ。そして後ろに置いてあった箱から何枚かの葉を取り出した。
「こいつはナンディーナという薬草だ。この葉を生のまま噛ませると良い。」
フェルディナンは俺に歩み寄り、薬草を渡して来た。
「ありがとうございます! えっと、お礼は…」
俺はお金を取り出そうとした。
「あー、いい、いい。金なんか出さなくて良いからよ。」
フェルディナンはニヤッと笑った。
「はやくそいつをリディに持ってってやれよ」
「は、はい! ありがとうございます!」
俺はペコリとして早足で部屋を出た。
とまぁ、こんな感じで。
このナンディーナと言う葉をリディに噛ませると効果てきめんで、表情も明るくなって良かった。
協力するのもしないのも自由、という事ならこういう時に恩を返した方が良い。
俺達は戦いの支度を整え、甲板へ向かった。
甲板へ出ると既にノエルのパーティが来ていた。
正確に言えばイアサントとロベールのパーティから一人ずつ来ているようだが、遠巻きに見ている感じだ。
協力する気はあまりなさそうかな。
さて船の前方を見ると、そこには何やらでかい生物がいた。
「あれは…タコ? 大きいね…」
タコだった。だがその大きさはダイオウイカよりも大きい。桁外れだ。
「おう、アスカ。来てくれたのか。」
フェルディナンがニヤッと笑った。
この人はニヤッとするのが好きそうだ。
「あれは何ですか? タコですよね!」
俺はフェルディナンの横へ行った。
「ああ、そうだな。名前は分からねえけど…、あれを倒さないと船は無事に通過できそうにねえな。」
「うーん…」
俺は考え込んだ。
「魔法でやっちゃえばいいじゃない。」
ノエルが話に入って来た。
「それもそうだがあのでかさだ。相当魔力を練り込んだ魔法を同時に何人かで放たないとダメだろ。」
それもそうだ。それに何の魔法が効果的かも分からないし。
「俺達のパーティには強力な魔法使いはいねえ。ノエル、お前の所はお前とエルネストくらいか。アスカ、お前の所はどうだ?」
「うちはアルフレッドだけですね、魔法使いは…」
「3名か…。残りのパーティの奴も手を貸してくれれば良いんだが…」
フェルディナンは後方をチラッと見た。
「ちょっと厳しいかもしれねえな。」
ロベールの所は予想できたけど、イアサントのパーティもあの対応とは思わなかった。
フェルディナンのパーティとは過去に何かあったのかな。
「ま、3人でやるにしても出来るだけ属性は揃えたい。それじゃ準備を…」
「ちょっと待って。」
俺はフェルディナンを制した。
「私、ちょっと試したいことがあるんだけど、任せてもらって良い?」
「あ? 何だと…?」
フェルディナンが怪訝そうな顔をした。
「うん、前の冒険以降、ちょっと練習していたことがあって…」
俺はノエルとフェルディナンにやってほしいことを説明した。
「ひ、一人で突っ込むだと…? この船からまだ距離もあるんだぞ…?」
「うん。だから私があのタコから攻撃されそうになったら、それを防いでほしいんです。」
「…勝算はあるのね?」
「うーん、勝算と言うか…」
俺はにこっとして二人を見た。
「どうしても練習したことを試したいの。それも…、実戦でね。」




