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俺・プリンセス  作者: 風鈴P
第7章 商船護衛編
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第63話 出港

この日、商船が出港した。

普段よりも霧が薄く、進行方向には海が見える。

「海を見るのはしばらくぶりだね。」

俺達4人は船室から出て目の前に広がる海を見た。

「そうだね、ボク、何かワクワクしてきたよ。」

カールが笑顔を見せた。

ここ数か月でだいぶ背が伸びたが、表情は年相応のものだ。

「・・・」

しかしリディの表情が冴えない。カールの腕につかまりながら、下を向いていた。

「リディ、どうしたの?」

俺はしゃがんでリディの顔を見た。

「…気持ち悪い。」

リディは涙を浮かべながら答えた。

「ああ、船酔いか…。とりあえずここに座って。」

俺はリディを座らせた。

「ねぇ、アルフレッド。船酔いに効く魔法とか…無いかな?」

「うーん、僕が使える回復魔法は傷を治すのだけで、こういうのは…」

「そっかぁ…」

俺はリディの気持ちを楽にさせようと頭を撫でた。

「なんでぇ! 船酔いかよ!」

後ろから嫌味ったらしい声が聞こえて来た。

振り返るとそこにはフェルディナンがいた。

そうか、初日の護衛担当はフェルディナンパーティだったな。

「へっへっへ、そんなんで護衛が務まるのかよ?」

フェルディナンがニヤニヤしながら言った。

リディはフェルディナンの顔をチラッと見たが、すぐに力なく俯いた。

「ちょっと、あんた! なんて酷いことを言うの!?」

俺はフェルディナンに詰め寄った。

「はん? お前こそ何を言ってやがる? もし何か起きた時船酔いの奴なんか足手まといになるだけじゃねえか。」

「・・・!」

俺は言葉に詰まった。

確かにフェルディナンの言う事は正論だ。

こんな状態では、いざ戦闘にでもなった時、リディは全く役に立たないだろう。

「お前もパーティのリーダーならよく考える事だな。こんな足手まとい、さっさと部屋に押し込んでおくことだ。」

「・・・」

大切な仲間がここまで言われてるのに何も言い返せない。

カールは拳を握っている。アルフレッドもだ。

「またやってるのか! いい加減やめないか!」

俺は声のする方を見た。ロベールだ。

「ち、てめえか…」

フェルディナンが表情を歪めた。

「全く…、お嬢さんが困っているというのに、助けてあげようとする気も起きないのか…。おい!」

ロベールが後ろにいた仲間に指示を出した。

仲間の男が袋から何やら薬草のようなものを取り出した。

「この薬草は煎じて飲むと酔い止めの効果がある。試してみると良い。」

「本当ですか? ありがとう…」

俺はお礼を言いながら受け取ろうとした。

フェルディナンはその光景を見ていた。

いや、光景を見ているというよりは俺が受け取ろうとしていた薬草を見ていた様だった。

「ククク…、はーっははっは!」

フェルディナンが突然大きな笑い声を上げた。

「ぇ…?」

俺はびっくりしてフェルディナンを見た。

その際に掴み損ねた薬草が下に落ちた。

「ロベール。あんた親切なフリして、大したタマだな!」

フェルディナンがロベールを見た。

「な、何を言っている!?」

「ハハハ、そいつは酔い止めなんかじゃ無ぇ。デルフィニウムていう毒草さ。」

「何を馬鹿な…!?」

ロベールが顔を歪めた。

「アスカ、こいつを信じてロベールの薬草とやらをそのガキに飲ませても良いんだぜ? ま、船酔い以上に苦しむことになるだろうがな。」

フェルディナンがニヤッと笑った。

「ふ、ふん。ヤクザ者の戯言に取り合ってはいられんな…。我々は戻るぞ。」

ロベールはフェルディナンを睨み付け、仲間と共に去って行った。

「カカカ、Aランク冒険者様も帰ったことだし、俺に任務に戻るとするかな。じゃあな、ガキ共!」

フェルディナンは笑いながら持ち場に戻って行った。




この後リディを自分たちの船室に送り届け、俺は単身でノエルパーティの部屋を訪ねた。

ノエルは少し嫌そうな顔をしたが、俺を中に入れてくれた。

「ノエル、聞いてほしいんだけど…」

俺はノエルに先程の出来事を話した。

「ふーん、なるほどね…」

ノエルは頷いた。

「まあ、フェルディナンがそういうなら、それは毒草なんじゃないかな。」

「何で分かるの?」

「ああ、フェルディナンはああ見えて薬学の専門家なんだよ。あまり知られてないけどね。」

「え…? そうなの?」

びっくりだ。見た目はヤクザにしか見えないのに。

「うん。私はこの船の任務を請け負う前に、あいつと一緒に仕事したことあるんだ。」

ノエルが言うには以前、ノワールコンティナンに自生する薬草、毒草について調べる仕事をしたことがあるらしい。

「あいつはBランクだが、戦闘は得意じゃないんだ。はっきり言って私の方がだいぶ強かったよ。それなのにどうやってBランクに、しかもパーティのリーダーをやってるのか…。ここまで言えばアスカにも分かるでしょ?」

…なるほど。薬に関する知識でそこまで上り詰めたのか。

「そうすると、フェルディナンはリディを守ってくれたのかな…。あの一言が無かったら、俺はあの毒草をリディに飲ませてた…」

「さあね。フェルディナンの性格だからどうだか分からないけどね。」

リディを守ってくれたのだとしたら、それについては礼を言わなければならない。

それに薬学の知識があるのなら、リディの船酔いも軽減させてくれるかも…。

騒動の後だしすぐ訪ねるのは良くないかもしれないが、後で訪問してみるとしよう。

俺は頷きながらそう考えた。



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