第61話 出港前会議にて
「我が商船は明日ノワールコンティナンを出港する。グヴェナエル共和国までは順調に行けば1か月ほどの行程だが…」
バルデレミーが海図を示しながら説明をしている。
俺達は船の会議室で今後の商船護衛に関する打ち合わせをしていた。
各冒険者パーティからは2名ずつの出席が認められていた。
俺達のパーティは俺とアルフレッド。
俺達をバルデレミーに引き合わせてくれたイアサントのパーティはまず代表のイアサント。
イアサントはB+ランク。そして副官はリーズという女性だ。Cランクらしい。
そしてその他のパーティについてだが、代表者だけ述べていこう。
まずは明らかにガラの悪そうな(日本風に言えばヤクザのような)のがフェルディナン、Bランク。
次に騎士風のがロベール、なんとAランクということだ。
テオドールと同じランクという事はかなりの実力者という事なのだろう。
そして最後がノエル、Bランク。中性的な顔の獣人だ。
ウチのカールは猫科の獣人だが、ノエルは犬科と言った感じだ。狐かな?
獣人だが魔導士のローブを着ているので魔法使いなのかもしれない。
ま、俺もローブ着てても腰に剣を下げているから恰好だけでは断定できないのだが。
「ま、この辺は各々に話した内容だ。以前言った通り、今回の成功報酬は生き残ったもので山分けだ。敵は外から来る者だけではない、と言うのはお前達も認識しているだろうが…」
バルデレミーは偉そうに葉巻をふかした。
「俺はどこかのパーティを贔屓したりはしない。だがら機会は平等に与えよう。任務の危険性もな。見張りは日替わりでやってもらうし、他のパーティと共闘しようがしまいが、お前達の自由だ。だがな、各々に与えられた部屋を襲い掛かるのだけは禁止する。」
なるほど。自らのパーティが最も安全に任務を遂行するには見張り番以外には部屋に引きこもっていればいいということだ。
だがこれはあくまでも他のパーティに対しての話。
自身の任務以外で引きこもっていてはもし仮に見張り番の時にパーティの実力を超える敵が現れた場合、他のパーティからの助けは望めないだろう。
他のパーティが完全に敵になるか、少しでも共闘の可能性が出てくるのかは自分たちの判断次第ということだ。
俺は各パーティをチラッと見た。
イアサントは完全に敵に回ることはないと思う。
副官のリーズもイアサントとは不釣り合いの美人(まるで美女と野獣だ。)だし、頭の回転は速そうだ。
そいや、あの“ドアボーイ”のBランク冒険者はいないのだろうか? このリーズはCランクだし。
ヤクザみたいなフェルディナンは見た目通りならあまり味方にはならなそうだ。
ま、見た目だけでは判断してはいけないかもしれないが。
ロベールは明らかに優等生タイプの騎士様だ。だがこういう奴ほど注意した方が良いかもしれない。
優等生は裏の顔を持っていそうだ。
ノエルは…モフモフしたい。出来る限り味方になりたい。
「これが見張りの当番表だ。もし当番のパーティが任務遂行が不可能になった場合は順番を繰り上げる。つまり報酬の分け前が増える代わりに、任務が大変になるという事だ。ま、その辺は自分達で判断することだな。」
俺は見張り当番表と受け取った。
冒険者パーティは5つ、完全な持ち回りだ。
1.ロベールパーティ
2.イアサントパーティ
3.ノエルパーティ
4.俺達のパーティ
5.フェルディナンパーティ
「会議は終わりだ。それでは各々、明日へ向けて準備すると良い。」
バルデレミーはそう言うと部下と共に会議室を出て行った。
「おいあんた、さっきはじろじろ周りを見渡してたがビビっちまったのか?」
ヤクザのフェルディナンが突っ掛かって来た。
実にめんどくさい。ここは適当にあしらっておこうかな。
「そうですね、皆さん強そうなのでつい見てしまいました。」
俺はそっぽを向いたまま答えた。
「フン、ガキが…。お前達はBランクのようだが、足手まといにだけはならねえで欲しいもんだな。」
ファンタジーな世界にも、やっぱこういうのはいるんだなぁ。
「やめないか。お嬢さんが困っているだろう。」
ロベールがフェルディナンの肩を掴んだ。
キター!明らかな優等生発言。
俺の様にひねくれた考えの持ち主でなければコロっと行ってしまいそうだ。
「へ、騎士様となると言う事が違うねぇ…。さて、部屋に戻るぞ。」
フェルディナンはロベールの手を振り払い、もう一人と共に会議室を出て行った。
「…不潔。」
ノエルはそれを見て表情を変えずに呟いた。
うんうん。この感じ、どこかで見た事のあるやつだ。
中性的な顔なので男の子か女の子か分からないけど、可愛がってあげたい。
おっと、助け舟を出してくれたロベールには一応感謝しておこう。
「助けていただき、ありがとうございます。ロベールさん。」
俺はペコッと頭を下げた。
「いや、礼には及ばないよ。僕達は1か月間、この船を護衛する仲間なのだからね。最も…」
ロベールは一呼吸置いた。
「キミの場合僕なんかが助けなくても、さっきの彼くらいどうにでもなりそうだけど…ね。」
俺は頭を上げてロベールの顔を見た。
柔らかい表情をしているが、やはり警戒は解かない方が良さそうだ。
「じゃ、僕達もここで失礼させてもらうよ。何かあったら気軽に僕達の部屋を訪ねてくると良い。では…」
ロベールは爽やかに笑うと、副官と共に去って行った。
「じゃあ俺達も失礼するぜ。」
イアサントと副官のリーズもロベールの後に部屋を出て行った。
残ったのは俺達とノエル達だ。
「・・・」
ノエルは俺の顔をじっと見て来た。
「えっと、それじゃ私達も…」
俺は部屋を出ようと、アルフレッドの袖口を掴んだ。
するとノエルがてくてくと歩いてきて俺の前に立って言った。
「あなた、ひょっとしてアルエット姫…?」
「・・・!」
ええええ!? この人、俺を知ってるのか…!?




