番外編 “腰抜けPT”の活動報告
~ケヴィン視点~
「おおぅ、マジかよ!」
俺は冒険者ギルドの更新情報を見て思わず声を上げた。
周りの冒険者が訝し気な視線を送って来た。
「…おっと!」
俺は周囲の視線を遮るように本を上げ、何事も無かったようなそぶりをした。
ま、今はAランク冒険者・ローランに変身しているからこんなことをしなくても大丈夫だが。
それにしてもこの更新情報には驚いた。
アスカ達がノワールコンティナンでAランク+の仕事をこなし、さらにかなりのランクアップをしていたのだ。
「…これを見るとアスカの師はテオドール・クザンだったんだな。」
パーティの代表者はAランク冒険者のテオドール・クザンだ。
テオドール・クザンはAランク冒険者というのもあり、冒険者の中ではかなり名の知れた男である。
テオドールは剣の名手だったはずだから、アスカがイアサントに勝ったというのも納得できる。
風の魔法による身体強化とテオドールの剣の技術が身につけばBランク中位くらいなら楽勝だろう。
もっとも実際に見たわけでは無いから、何とも言えないが。
Aランク+の仕事を終えたなら、謝礼金もそれなりの額を貰っているだろう。
アスカ達はその金で船に乗ってノワールコンティナンを出ようとするはずだ。
ノワールコンティナンと航路があるのはグヴェナエル共和国の港だけだ。
で、あればひとまずそこで留まるのが正解だろう。
俺は冊子を棚に戻すと冒険者ギルドを出た。
しばらく歩いていると路地裏の方から騒ぎ声が聞こえて来た。
「や、やめてください!」
若い女性の声の様だ。他に2、3名の男の声もする。
「ふむ…」
あまり関わりたくはないが、放ってはおけまい。
俺は声がした方へと走った。
路地を曲がると女性が男に囲まれていた。
男達は兵士の恰好をしていた。おそらくこの町の兵だろう。
町を守るべき兵が女性を襲うなんて嘆かわしいことだ。
「貴様ら! 何をしている!」
俺は大きな声を出した。
しかし兵達は女性を離そうともせず、その内2名は剣を抜いてきた。
「…ち!」
俺は舌打ちした。すぐ逃げてくれれば面倒なことにならないのにな。
兵のうち一人が俺に斬りかかって来た。
俺は難なく躱すと左手でその兵士の手首を掴んだ。
「悪いがちょっと骨を折るぞ。」
俺は右の掌底を前腕に向けて突き上げた。
バキ!
兵の前腕の腕が鈍い音をして折れた。
「ぐわぁぁぁ!」
兵士が大きな声を上げて剣を落とし蹲った。
「さて、お前は骨を折られたいのかな?」
もう1名の兵が一瞬たじろいだ。
俺はその隙を逃さず、兵の腹にパンチをお見舞いした。
その兵士は苦しそうに顔をゆがめ、崩れ落ちた。
俺はすぐに剣を抜いて、女性を捕まえていた兵に剣を突き付けた。
「見ての通り、お前等の腕では俺は倒せん。その女性を少しでも傷つけてみろ? お前の命は無いと思え。」
俺は最後の兵士を睨み付けた。
「く…!」
その兵士は女性を離し路地の奥へ逃げて行った。
他の2名もよろよろと立ち上がり、同じ方向へ逃げた。
「さて…、大丈夫かな? お嬢さん。」
俺はその場にへたり込んでいた女性に手を差し出した。
「は、はい…。ありがとうございま…」
女性が俺の手を掴んで立ち上がった。しかし女性はすぐにキッとした視線を向けて来た。
「でもわたくしはあの兵達を傷つけてくれとは頼んでいませんわ!」
ぺち!
女性が俺に平手打ちをした。
無茶苦茶だ。恩人である俺に平手打ちをしてくるなんて。
「あー、ありえないことだが、今の平手打ちで万が一俺が傷ついても、それは問題ないのかい?」
この女性はどこぞのシスターといった感じの人で、腕力は無さそうだ。
だから平手打ちをされたところで、何ともないのだが。
「…は! わたくしったら…、なんてことを…。すみません。」
女性がしゅんとうな垂れた。
その際にフードが落ち、顔が露わになった。
長い耳がある。この女性は長耳族だな。
「助けていただいたのに、わたくしは…」
女性は恥ずかしそうな表情を浮かべた。
「まぁ、怪我が無さそうでなによりだ。ああいう連中に会わない様に、今後気を付けるんだな。」
俺はその場を後にしようとした。
「ま、待ってください!」
女性が俺の腕を掴んだ。
「ん…?」
俺は立ち止まって女性を見た。
「あ、あの…。お願いが…」
女性が俺に何かを伝えようとしている。
面倒なことにならなければ良いのだが。




