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俺・プリンセス  作者: 風鈴P
第6章 北方洞窟探索編
62/121

第58話 帰還

『報告書』

ノワールコンティナン北方洞窟探索

難易度:A+

パーティ代表者:テオドール・クザン(Aランク)

以下、パーティメンバー

ガストン・ベルディエ(Bランク) 死亡

アルフレッド・フランクール(Cランク) 生還

アスカ・エール・フランクール(Dランク) 生還

カール・マルリアーヴ(Eランク) 生還

リディ・ベルナデット・ウイユヴェール(Eランク) 生還


結果:成功

前回探索組到達地点でもある大量の不死系の魔物を一掃、さらにフロアボスとも言える龍族が不死系に変化した魔物を討伐することに成功。尚、この戦いにてガストン・ベルディエ(Bランク)が死亡。この場所の奥に恐らく魔族が魔王崇拝をしたであろう神殿様の建造物を発見、調査したが落盤が酷くさらに奥の調査続行は困難と判断、帰還した。


報奨:依頼者よりパーティに180グラハム金貨を授与


備考:

今回の仕事成功により、以下の者をランクアップとする。

テオドール・クザン A⇒A+

アルフレッド・フランクール C⇒B+

アスカ・エール・フランクール D⇒B

カール・マルリアーヴ E⇒C

リディ・ベルナデット・ウイユヴェール E⇒C


また依頼者は北方洞窟をこれ以上の探索価値無しと判断、今後の継続調査はしないことを決定。



以上が今回の北方洞窟探索の結果報告書だ。

これはテオドールの報告の元に、冒険者ギルドが纏めたものだ。

この仕事の成功で、俺達の冒険者ランクはグーンとアップした。

パサッ。

俺は報告書をテーブルに置いた。

俺達は仕事を終え、泊まっていた宿に戻っていた。

テオドールとアルフレッドは報奨金を受け取りにギルドに言っていた。

もうそろそろ戻ってくるだろう。

俺、カール、リディは留守番だ。

「・・・」

俺は窓際の方を見やった。

そこには誰も座っていない椅子があった。

リディの一族の村出発しこの宿に到着してから北方洞窟探索に出掛けるまで、ガストンが座っていた椅子だ。

豪快に酒を飲むガストンの姿はもう見られないのだ。

ギィ…

部屋のドアが開いた。

「ただいま。」

アルフレッドとテオドールだ。

「報奨金を貰って来た。さて、みんな聞いてくれ。」

テオドールが俺達の前に立った。

「この仕事はお前達がいなければ完遂することが出来なかった。…もちろん、ガストンもだ。まず礼を言わせてくれ。」

テオドールが頭を下げた。

「報奨金は総額180グラハム金貨だ。ノワールコンティナンの金貨は金純度の関係でお前達の出身地のナイザール金貨の1.5倍の価値があるものだ。」

テオドールが袋から金貨を取り出して見せた。

金貨がキラキラを輝きを見せた。

「この報奨金だが、オレは均等に分けようと思う。このパーティは6人だ。1人あたり30グラハム金貨だ。それで良いな?」

「え、こういうのって普通リーダーが少し多くとるとかじゃないの?それにガストンさんは…」

俺はテオドールを見た。

「確かにリーダーはオレだが、さっきも言ったようにお前らがいなかったら生きて帰ってこれなかったんだ。それにガストンは死んでしまったが…、奴はオレ達の仲間だろ?」

「うん…」

「だからガストンも貰う権利はある。とりあえずこの中からオレは30グラハム金貨を貰うから、残りはお前達のものだ。」

テオドールは取り分を抜き取ると、袋を俺に渡した。

ズシリと重い報奨金は北方洞窟探索の困難さを示しているようだ。

「さてこれからの事だが、オレはここでお前達と別れようと思う。」

「え…?」

「このパーティは今回の仕事の為だけに結成したものだ。これ以上オレの都合に付き合わせるつもりは無い。お前達はノワールコンティナンから出たいんだろう。」

「うん。」

「オレはこの大陸に残り、暗黒大陸の未踏地域の謎に挑むつもりさ。さて…」

テオドールが俺達を見渡した。

「最後に言わせてくれ。少し長くなるが…、まずアルフレッド。」

「は、はい。」

「この中ではお前が一番冷静に判断を下すことが出来る。それにそこのお姫様はお転婆だから、お前のお守が必要だ。」

その言葉に俺は少し顔を赤くした。

「お前が要だ、しっかりやってくれ。」

「はい、分かりました。」

アルフレッドがしっかりとした表情で答えた。

「次にカール。」

「え、あ、はい…!」

「お前は戦いでは一番前に立たなくてはならないだろう。敵に一番近い位置だからこそ、周りを見える様になるべきだ。分かるな?」

「うん、分かりました。」

カールが頷いた。

「次にリディ。」

「はい…!」

「北方洞窟ではお前の能力の一端を見た。お前の能力には色々と制約がありそうだが、強力なものだ。自分自身や仲間を守るために、使い時、使い道を誤らないでほしい。」

「うん、分かったよ。」

テオドールが俺を見た。

「最後にアスカだが…」

「う、うん…!」

「お前は良く分からん。」

へ…? 分からんって何よ?

「とりあえず女子力を磨いたらどうだ?」

「な、な、何言ってんの!? いい流れだったのに!」

俺は頬を膨らました。

「ははは、冗談だ。それはさておき、お前は良く分からんだけあって、色々な可能性があると思う。それがどんなものかオレには想像がつかない。だがな…」

「…?」

「仲間を大切にする気持ち、それさえあればお前は良い方向にいけるはずだ。オレはそう思うよ。」

仲間を大切にする、それはこの世界に来てかなり大事なものだと痛感している。

それは以前の『俺』には欠けていたものだ。

「うん…! 分かりました!」

俺はテオドールを見ながら答えた。

「うむ、元気で宜しい。さて、オレはそろそろ旅立つとするよ。」

テオドールは自身の荷物を持ち上げた。

「お元気で、テオドールさん…」

「ああ。ま、生きていれば会えることもあるだろうさ。じゃ、またな!」

テオドールは手をひらひらさせてから宿を出て行った。




俺は今回の仕事で実力的にも精神的にもかなり成長できた。

確かにガストンとの別れは悲しいものだ。

だがその経験も合わせて、今回の仕事は今後の俺達にとってかなり大きいものであったに違いない。

俺はそう思った。

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