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俺・プリンセス  作者: 風鈴P
第6章 北方洞窟探索編
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第57話 北方洞窟探索(7)

ガストンを荼毘に付した後の探索は意外にも順調だった。

恐竜骸骨のような強力な魔物は出てくることも無く、罠があるわけでもなかった。

とは言え弱い魔物は現れるのでそれを退けながら先に進んだ。

「待て、あれは明らかに人工物だな。」

テオドールが前方を指さした。

そこには部屋の入り口のようなものがあった。

これはどこかで見たことがある。

そうだ、あの転移魔法陣があった建物と同じような造りだ。

「あの中に入るぞ、ただし慎重にな。」

「まって! 空気を調べるから。」

俺は風の宝玉に魔力を込め、中の空気の流れを探った。

特に変わった感じは無さそうだ。

「…特に中には何もいないみたい。リディとカールはどう?」

「ん、水が滴る音は聞こえるけど、それ以外には…」

「ボクのほうも、さっきまで感じていた魔物の臭いや、変な臭いはしないかな。ただ、重苦しい雰囲気は感じるけどね…」

重苦しい雰囲気、それは確かに感じる気がする。

「…よし、オレが戦闘で行こう。アルフレッドは念の為後方警戒を頼む。」

「分かりました。」

俺達はテオドールを先頭に部屋の中に入った。

「…結構広いね、ここ。」

部屋は古い神殿のようだった。

前方には苔むした祭壇のようなものがあり、天井は所々崩れかけているがかつては立派な礼拝所のような所だったのだろうか。

「見たことのない様式の祭壇だな。」

テオドールが祭壇を見上げながら言った。

「ここ、多分魔族が作った祭壇だと思う。」

「分かるのか? リディ。」

「ここの文字、魔人語だ。これは魔王を崇拝するときに使う祭壇に似てる。随分古いみたいだけど。」

リディが祭壇に書かれている文字を覗き込んだ。

「リカ…ロス…」

リディは顔を強張らせながら呟いた。

「この奥にも部屋があるみたいだ。」

祭壇の近くを調べていたアルフレッドが声を掛けて来た。

なるほど、石で塞がれているようだが出入り口の様に見える。

「ふむ。カール、壊せるか?」

テオドールがカールを見た。

「うん、やってみるね。」

カールが拳を握りしめた。

「ハァッ!」

気合と共にカールの拳が石を砕いた。凄いパワーだ。

俺達は警戒しつつ、奥へ進んだ。

そこにあったものは魔法陣だった。

「これは、転移魔法陣か?」

テオドールがしゃがみ込んだ。

俺達がノワールコンティナンに転移してきた魔法陣に似ていた。

違うところがあるとすれば、魔法陣には見慣れない文字が書かれれいるところだ。

さっきリディが魔人語だと言っていた文字に似ていた。

「リディ、その文字読める?」

「う、うーんと…」

リディが文字を見た。

「これは…、多分この転移魔法陣の行き先が書かれているんだと思う。えっと…」

リディは口をつぐんだ。

「どうかしたの?」

カールが心配そうに言った。

「行き先は…、リカロスベルク…」

リディはそこまで言って押し黙ってしまった。

「聞いたことのない所だけど、リディは知ってるの?」

俺はリディの顔を覗き込んだ。

「うん…。人族の地図にはないと思うんだけど、この大陸の魔王が支配している地域のどこかにあった人族の町って長老様が言ってた。今はもう魔王に滅ぼされて存在しないらしいけど…」

なるほど、その魔王がリディの一族を迫害していたんだっけな。

しかし、魔王の名前がリカロスで、町の名前はリカロスベルクとは…?

「つまり、この転移魔法陣はその魔王が支配する地域に入り込める可能性があるわけだな。」

テオドールが腕を組んだ。

「んーでも、この魔法陣が使えるかどうかも分からないでしょ?」

「そうだな。だが少なくとも死んではいないはずだ。これほど濃い魔の力はこの魔法陣から漏れ出ているのだろう。」

「ふーん、そっかぁ。」

「この場所は危険だ。少なくともこの魔法陣がある部屋は封じておいた方が良いだろう。」

「え、何で?」

「あくまでもオレ達の仕事はこの洞窟の探索、この魔法陣の先に行くことではない。だが、この魔法陣の報告をすれば、他の冒険者がこの魔法陣を使おうとするかもしれん。魔法の支配地など、全くの未知の世界だ。安易に行くべきは無い。」

そうだな。この洞窟でさえ危険な場所だったんだから。

「よってオレはこの魔法陣についてギルドに報告する気は無い。この部屋はそうだな…」

テオドールは俺達をぐるっと見た。

「天井を崩して塞いでしまおう。カールとアルフレッド、手伝ってくれ。」

「は、はい。」

テオドールの方針の下、北方洞窟の探索は魔王崇拝の祭壇が奥にあったのを見つけた、という所までをギルドに報告することとした。

俺達はここまで来るのでかなり疲弊していたのでこの先に行けないのは言うまでもないが、他の冒険者が入り込もうとするのを防ぐべきと判断したのだ。

恐らくそれは現時点ではベストの判断であろう。


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