第56話 北方洞窟探索(6)
「ガストンさんの遺体を…?」
「そうだ。」
テオドールが沈痛な声で答えた。
「この洞窟の不死系の魔物は冒険者の成れの果ての姿だ。ガストンの遺体もこのままにしておくとそうなってしまうんだ。」
理屈では分かっている。分かってはいるが、いざ仲間の場合となると…。
「アルフレッド。辛い役目だとは思うが、これはお前にしか出来ない。やってくれるな?」
「はい…」
アルフレッドが頷き、詠唱を始めた。
ガストンが魔物に変わるのを防ぐためには、遺体を燃やし尽くさねばならない。
火属性の魔法を使えるのはアルフレッドだけだ。
詠唱が終わると、アルフレッドの掌から炎が放たれた。
真紅の炎がガストンを燃やし尽くすのを、俺達はただ無言で見ていた。
「ねぇ、俺達これからどうするの?」
ガストンの遺体が燃え尽きるのを見届けた後、俺はテオドールに話し掛けた。
「うむ、今日のところはここで休もう。」
「え、こんなところで…?」
「あの化け物はここのフロアボスのだったようだな。やつを倒したら付近に魔物が出なくなったからな。それに…」
テオドールはガストンが装備していた剣を地面に突き刺した。
「今日のところはガストンがオレ達を見守ってくれるだろう。」
「そうだね…」
テオドールって意外と仲間を大切にする人だったんだな。
「見張りにはオレが立とう。お前達は先に休め。」
パチパチ…
辺りには焚火が燃える音だけが響いていた。
俺はその火を使ってスープを作っていた。
「・・・」
皆無言だ。俺は周りとチラッと見た。
リディは横になった態勢で洞窟の壁の方を見ていた。
カールはその傍で蹲っていた。
アルフレッドは焚火の火をただ無言で見つめていた。
「ね、ねえ。スープ、出来たよ。」
俺は無理にでも空気を変えようと皆に話し掛けた。
「リディ、おなかすいたでしょ? ほら!」
「・・・」
リディは答えなかった。
「…ボクもらうよ。」
カールがスープ椀を受け取った。そしてスープを一気に飲み干した。
「ボクはもっと強くならないといけない。あの時、魔物が炎を止められる可能性があったのはボクだけなんだ。」
確かにカールは一番近くにいた。
だからと言って全てをカールに強いるのは無茶な話だ。
「違うよ…、ガストンは俺の代わりに死んだんだ。」
リディが視線を合わせずに口を開いた。
「あの時、俺がすぐ逃げられれば、ガストンは死ななかったんだ。」
リディはそう言って起き上がった。目は真っ赤だ。
「ガストンが死んだのは俺のせい…」
「リディ! やめないか!」
アルフレッドが大きな声で言った。
「ぅ…」
その声にリディは押し黙った。
「今回は誰のせいとか、そう言うんじゃない。僕達はみんなベストを尽くしたんだ。」
アルフレッドがそう言った後、俺はリディにスープを差し出した。
「アルフレッドの言った通りだ。俺だって悲しいし、自分がもっと動ければって思ったりしたよ。でもいつまでも悲しんでいたらガストンに失礼だよ。」
リディはスープを受け取った。
「ごめんなさい…。いただきます…」
リディがスープを飲み干した。
仲間の死、それは俺達に大きな影を落とす出来事だった。
冒険者だから危険は付き物である。
頭では分かっていても、その覚悟が十分でなかったのかもしれない。
俺もそうだ。
今回はたまたまガストンだっただけで、俺だっていつ死ぬか分からない。
今回の仕事はそれほどのものだったのだ。




